1年の中で最も日が短くなる冬至には、かぼちゃを食べたり、ゆず湯に入ったりするのがお馴染みですよね。しかし、なぜ夏野菜であるかぼちゃを冬至に食べるのでしょうか?この記事では、冬至にかぼちゃを食べる理由とともに、かぼちゃの栄養素・効果などを紹介します。
冬至にかぼちゃを食べる理由
冬至は、1年を通して昼の時間が最も短い時期。古くから太陽は生命力の象徴であり、冬至には人間の生命力も衰えると考えられていました。人々は弱まった生命力を回復・再生させるために、冬至には栄養価の高い食べ物を食べるようになりました。
しかし、今のように温室栽培などの技術がなかった昔は、冬になると野菜があまり採れませんでした。
そこで、活躍したのがかぼちゃ。かぼちゃは栄養価が高い上に保存もきくため、夏に採れたかぼちゃを保存しておき、冬至に食べて、栄養源としていたのです。
温室栽培や冷蔵・冷凍技術の乏しかった時代だからこそ、人々の知恵から生まれた風習ですね。
ちなみに、かぼちゃは「なんきん」とも呼ばれますが、「ん」のつく食べ物には運気を上げる力があると言い伝えられています。かぼちゃには2つの「ん」がつくので、運気を上げる力も強そうですね。
冬至にいとこ煮を食べるのはなぜ?
冬至にかぼちゃを食べるのは全国でみられる風習ですが、調理の仕方は地方・家庭によって異なります。特に、北海道や北陸地方、茨城県や秋田県などでは、かぼちゃと小豆を一緒に煮た「いとこ煮」を食べる方が多いようです。
冬至にいとこ煮を食べるようになった理由としては、小豆がかぼちゃ同様に保存がきくこと、栄養価が高いことなどがあげられます。また、小豆の赤色は「魔除けの色」として、厄除けの意味もあります。
ちなみに、かぼちゃと小豆は「めいめいに」煮て作ることから、「姪」と「姪」は「いとこ」であるため、いとこ煮と呼ばれるようになったのだとか。
かぼちゃに含まれる栄養素と効果
かぼちゃには、主に以下の栄養素が豊富に含まれています。
・β-カロテン
・ビタミンE
・ビタミンC
・葉酸
・カリウム
・食物繊維
緑黄色野菜であるかぼちゃには、さつまいもの約100倍ものβ-カロテンが含まれています。カリウムや食物繊維の含有量も、野菜の王様と呼ばれるケールに匹敵するほど。また、かぼちゃのビタミンE含有量は、野菜の中でもトップクラスです。
これらの栄養素には、抗酸化、免疫サポート、腸内環境を整える作用などがあります。また、カリウムは高血圧予防、食物繊維は糖尿病や脂質異常症などの予防に役立つ栄養素です。
「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」といわれる通り、かぼちゃに含まれる栄養素はさまざまな疾病予防に効果的です。ただし、かぼちゃは比較的カロリーも高めな野菜なので、食べ過ぎには要注意です。
\かぼちゃの栄養価はこちらの記事で詳しく紹介しています/
冬至に作ろう!かぼちゃのいとこ煮のレシピ
いつもはシンプルなかぼちゃの煮物を食べている方も、今年はいとこ煮を作ってみてはいかがでしょうか。かぼちゃと小豆のほくほくコンビは相性抜群。甘めに仕上げてスイーツ感覚で楽しむのもおすすめです。
材料
・かぼちゃ 1個(600〜700g)
・小豆 50g
・醤油 大さじ1 ★
・砂糖 大さじ1〜2 ★
・みりん 大さじ1 ★
・水 1カップ ★
・料理酒 大さじ4〜5 ★
*水や料理酒の量は、かぼちゃの大きさに合わせて調節してください
小豆の下ごしらえ
①小豆は一晩水(分量外)に漬けておく
②漬けおいた水を切り、小豆の5倍量の水で柔らかくなるまで煮る(小豆が常に水に浸るよう時々水を足す)
小豆を煮る時間は、普通の鍋なら中火で40〜50分、圧力鍋なら15分が目安です。
小豆から大量のアクが出る場合は、茹で汁を捨て、新しい水に差し替えるのがおすすめ。
いとこ煮の作り方
①一口大に切ったかぼちゃと茹でた小豆を鍋に入れ、★の調味料をすべて入れる
②落とし蓋をして中火で10〜15分煮る
③かぼちゃが柔らかくなったら落とし蓋を外し、煮汁がほとんどなくなるまで強めの中火で煮詰める
簡単に作りたい方は、ゆで小豆や乾燥小豆を使うのがおすすめ。小豆に甘みが付いている場合は、分量の砂糖を減らして調節しましょう。
かぼちゃ以外には何を食べる?冬至の七草とは
春の七草は有名ですが、「冬至の七草」もあるのをご存知ですか?
冬至の七草は、
・なんきん(かぼちゃ)
・にんじん
・れんこん
・ぎんなん
・きんかん
・かんてん
・うどん
です。
うどんは「草」ではないのでは…?と思いますが、実際は「冬至の七種(ななくさ)」。さまざまな食材が含まれます。
これらの食べ物は「ん」がつくのが共通点。冬至に食べると、運を呼ぶといわれています。具だくさんの煮込みうどんにして食べると、体も心も温まりそうですね。
ちなみに冬至にゆず湯に入る理由は
冬至には、ゆず湯に入るのも定番。江戸時代の後期には、冬至にゆず湯に入る風習があったようです(*1)。
ゆず湯に入る理由としては、ゆずの成分が皮膚に良いこと、強い香りが邪気を払うと考えられていたことなどがあります。
ちなみに、ゆずは抗酸化作用の強いビタミンCを豊富に含む果物。お風呂に入れるだけでなく、果汁を搾ったり、果皮を刻んで食べたりするのもおすすめです。
冬至にかぼちゃを食べる風習には意味があった
太陽の力とともに弱まった人間の生命力の回復を願うため、冬至にかぼちゃを食べるようになりました。かつては冬に十分な野菜が収穫できませんでしたが、保存がきき、栄養価も高いかぼちゃは冬至の貴重な食糧だったのです。
食糧の調達に不自由することのなくなった現代。冬至にはかぼちゃを食べながら、遥か遠い時代の人々の知恵と工夫に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
Written by Yukari
かぼちゃは冬のイメージがありますが、夏に収穫される野菜。現代でも、収穫したばかりのかぼちゃは甘味が少ないため、1ヶ月ほど追熟してから食べるのが一般的です。かぼちゃを美味しく食べるためにも、冬至までじっくり保存していたのかもしれませんね。
参考文献
*1 レファレンス共同データベース
*農林水産省「かぼちゃのいとこ煮 茨城県」