味噌は、材料や製法によっていくつかの種類に分けられます。しかし、どのように分類されていて、どのくらいの種類があるのかは案外知らないもの。この記事では、味噌の種類とともに、栄養価や味わいなどの特徴について解説します。地域による味噌の違いや、味噌の銘柄も併せて紹介しますね。
大きく分けて3種類!味噌の種類と特徴
味噌は、蒸煮した大豆に麹と食塩を加えて作ります。この麹の種類により、味噌は大きく3種類に分けられます。
・米味噌・・・米麹で作られたもの
・麦味噌・・・麦麹で作られたもの
・豆味噌・・・豆麹で作られたもの
ちなみに麹とは、米・麦・大豆のそれぞれに麹カビをつけたものです。麹カビが産生する酵素によって、原料中のデンプンやタンパク質などが分解され、うま味や甘味が生まれます。
味噌は、原料に使用する米や麦の割合が多いほど甘味が強くなり、大豆が多いほどうま味が強くなるといわれています。
その理由は、米や麦にはデンプンが多く、大豆にはタンパク質が多く含まれるため。デンプンはブドウ糖などに分解されて甘味が生まれ、タンパク質はアミノ酸に分解されてうま味を呈します。
それぞれの味噌の特徴を下の表にまとめました。
味噌の種類 | 特徴 |
米味噌 | 甘味が強い。白・赤味噌、甘口・辛口がある。 |
麦味噌 | 甘味が強い。淡色・赤味噌がある。 |
豆味噌 | うま味が強い。 |
最も多く製造されているのは米味噌
市販されている味噌の8割は米味噌です。お店で食べる味噌汁も米味噌を使用していることが多いので、最も馴染み深い味だといえますね。
色や味による味噌の分類
味噌は、製造方法や塩分濃度などの違いによって、さらに細かく分類されます。
白味噌と赤味噌
白味噌は、熟成期間を短くしたり、熟成中の撹拌を抑えたりすることで、淡いクリーム色に仕上げた味噌。銘柄としては、京都の西京味噌が有名です。
一方、赤味噌は、長時間かけて熟成し、熟成中も切り返しと呼ばれる撹拌を行います。酸素との接触を増やすことで色の変化が促進され、赤みのある褐色になります。赤味噌は、色の変化とともに風味や香りのもとになる成分も生まれるため、コクやうま味が強くなります。
また、白味噌より色が濃いものを「淡色味噌」といいます。白味噌と赤味噌の中間的な色合いですね。
甘口と辛口
甘口と辛口は味による分類で、主に塩分濃度によって分けられます。甘口は塩分濃度が7~12%、辛口は11~13%です。さらに、塩分濃度が5~7%と低いものは「甘味噌」と呼ばれます。
種類 | 塩分濃度 |
甘味噌 | 5~7% |
甘口味噌 | 7~12% |
辛口味噌 | 11~13% |
基本的には上記のように塩分濃度によって分けられますが、同じ塩分濃度でも糖の割合が多いと甘くなります。甘・甘口味噌は糖の量が多く、辛口味噌は少なくなります。
【一覧表】味噌の種類と銘柄
麹の種類、色・味などによる味噌の分類を一覧表にまとめました。それぞれの代表的な銘柄も併せて紹介します。
原材料(麹) による分類 | 味による 分類 | 色による 分類 | 塩分濃度 | 代表銘柄・産地 |
米味噌 | 甘 | 白 | 5~7% | 西京味噌 |
赤 | 5~7% | 讃岐味噌(香川) 府中味噌(広島) | ||
甘口 | 淡色 | 8~15% | 相白味噌(静岡) | |
赤 | 10~15% | 御膳味噌(徳島) 中味噌(瀬戸内) | ||
辛口 | 淡色 | 11~13% | 信州味噌 | |
赤 | 12~13% | 仙台味噌 津軽味噌 | ||
麦味噌 | 甘口 | 淡色 | 9~11% | 九州・四国など |
赤 | 11~12% | 九州・埼玉など | ||
豆味噌 | 辛口 | 甘口 | 10~11% | 八丁味噌(愛知) 名古屋味噌 |
米味噌で有名な銘柄は、京都の西京味噌(白甘味噌)、辛口の信州味噌(淡色)や仙台味噌(赤)などです。
麦味噌は甘口が多く、九州地方を中心に作られています。
豆味噌は、愛知県岡崎市の八丁味噌が有名ですね。八丁味噌は大豆と塩だけで作られているのが特徴で、甘味が少なく、強いコクやうま味が感じられるのが特徴です。
全国味噌MAP!地域による味噌の違い
地域ごとの味噌の特徴を大まかにまとめると、上の図のようになります。
北海道や東北では赤辛口の米味噌が多く、南下すると淡色系や白味噌が多くなる傾向にあります。また、九州では麦味噌が多く作られています。
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色々な味噌を食べてみよう!銘柄をお取り寄せ
ここまで紹介してきたように、味噌にはさまざまな種類があります。その中から、代表的な銘柄を紹介します。
1.西京味噌(白甘味噌)
白甘味噌の代表といえば、西京味噌です。京都の王朝文化とともに発展した西京味噌は、上品な甘さと控えめな色合いで、料理を格式高く仕上げてくれます。
塩分量が控えめなので、減塩に取り組んでいる方にもおすすめですよ。
2.仙台味噌(赤味噌)
赤味噌の代表といえば、仙台味噌。米麹の自然な甘みと、大豆のコクやうま味とのバランスがよく、スッキリした味わいが楽しめます。
仙台味噌は、戦国時代から兵糧として発展しました。伊達政宗が戦に持参した味噌が、他の味噌より傷みにくかったことで諸大名のあいだで評判になったのだとか2(*)。
仙台味噌の品質を守るために原料の配合比率や製法などに厳しい掟が作られ、いまでも伝統的な製法が守られ続けています。
3.八丁味噌(豆味噌)
八丁味噌は、岡﨑城から八丁の距離(約870m)にある八丁村で生まれたことがその名の由来。
大豆と塩だけで作られており、豊かなコクやうま味、ほのかな酸味と苦味があるのが特徴です。米味噌や麦味噌に比べて甘味が少ないので、物足りなさを感じる場合はみりんを加えるのがおすすめ。
豚カツの味噌だれや、味噌田楽などに使うこともできます。
まとめ
甘めの味付けにしたいときは米味噌の淡色~白、または麦味噌がおすすめです。反対に、甘さを抑えたいときは豆味噌や、米味噌の辛口が適しています。
また、料理にしっかり色を付けたいなら淡色系や赤系、色をあまり付けたくないなら白系を選びましょう。例えば、西京味噌を使うと優しい甘味と柔らかい色合いの味噌汁が作れます。
味噌はさまざまな種類があり、それぞれ特徴も違うので、好みや用途に合わせて使い分けてみてくださいね。
Written by Yukari
味噌は発酵・熟成中にさまざまな成分変化が起こり、特有の風味や色などが生まれます。それは、麹カビや乳酸菌が原材料の成分を分解し、さらにその成分同士が反応するため。なので、原材料の種類や熟成期間・方法を変えて、反応を促したり抑えたりすることで、仕上がる味噌の特徴が変わります。とても奥深い味噌の世界。是非、さまざまな種類の味噌を試してみてくださいね。
参考文献
*1 日本フードスペシャリスト協会編『食品の官能評価・識別演習』
*2 農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 仙台味噌」