亜鉛は、体の機能を維持するために必要な栄養素です。しかし、どのような食品にどれくらいの亜鉛が含まれるか分からないと、亜鉛が不足しているかどうかも判断できないですよね。この記事では、亜鉛の1日の摂取量の目安とともに、亜鉛を多く含む食品を紹介します。コンビニで食品を選ぶ際のおすすめメニューや、亜鉛を摂るコツも併せて紹介するので参考にしてみてくださいね。
亜鉛の働き

亜鉛はミネラルの一種です。体内では、主に酵素の構成成分として働きます。
たとえば、SODという酵素は、体内で発生した有害な活性酸素を除去し、体内の成分を酸化から守る役目を果たします。また、DNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼは、DNAやRNAの合成に関わる重要な酵素で、細胞分裂やタンパク質の合成に関わります。
これらの酵素は、構成成分である亜鉛が存在しなければ十分に働くことができません。亜鉛は酵素の活性を介して、抗酸化や細胞分裂、タンパク質の合成などに関与しているのです。
亜鉛が不足するとどうなる?

亜鉛の摂取量が長期的に不足すると、食欲不振、味覚障害、皮膚炎、免疫機能の低下、性機能不全などが起こる可能性があります。特に、味覚障害は亜鉛の欠乏症としてよく知られています。
亜鉛は味覚細胞の生まれ変わりにも関わっています。亜鉛が欠乏して味覚細胞のターンオーバーが滞ると、味覚障害が起こるといわれています。
亜鉛は1日にどれくらい摂れば良い?

亜鉛の1日の推奨摂取量は、年齢や性別によって異なります。下の表を参考にしてみてくださいね。
年齢 | 男性の推奨量 | 女性の推奨量 |
---|---|---|
0~5か月 | 1.5mg(目安量) | 1.5mg(目安量) |
6~11か月 | 2.0mg(目安量) | 2.0mg(目安量) |
1~2歳 | 3.5mg | 3.0mg |
3~5歳 | 4.0mg | 3.5mg |
6~7歳 | 5.0mg | 4.5mg |
8~9歳 | 5.5mg | 5.5mg |
10~11歳 | 8.0mg | 7.5mg |
12~14歳 | 8.5mg | 8.5mg |
15~17歳 | 10.0mg | 8.0mg |
18~29歳 | 9.0mg | 7.5mg |
30~64歳 | 9.5mg | 8.0mg |
65~74歳 | 9.0mg | 7.5mg |
75歳~ | 9.0mg | 7.0mg |
妊婦 (中期~後期) | +2.0mg | |
授乳婦 | +3.0mg |
亜鉛は、心身の発達が盛んな成長期に最も需要量が多くなります。特に中高生はしっかり亜鉛を摂取したいですね。
また、妊娠中期から後期、授乳期は、年齢に応じた摂取量にプラスして亜鉛を摂る必要があります。例えば、30代なら妊娠中期以降は1日あたり10mg、授乳期は11mgを目安に摂りましょう。
亜鉛を多く含む食品一覧
亜鉛は、主に魚介類や肉類に多く含まれています。亜鉛を豊富に含む食品と、亜鉛の含有量を下の表にまとめました。
食品 | 亜鉛含有量 (/100g) | 食品 | 亜鉛含有量 (/100g) |
---|---|---|---|
牡蠣 | 14mg | 豚レバー | 6.9mg |
イタヤ貝 | 6.1mg | 牛肩ロース | 5.8mg |
ホヤ | 5.3mg | 牛ひき肉 | 5.2mg |
タイラ貝 | 4.3mg | ラム肩肉 | 5.0mg |
イカナゴ | 3.9mg | 牛ランプ | 4.9mg |
ウグイ | 3.4mg | 鶏レバー | 3.3mg |
毛ガニ | 3.3mg | 砂肝 | 2.9mg |
イイダコ | 3.1mg | 豚肩・肩ロース | 2.7mg |
特に亜鉛を多く含む食品は牡蠣です。生の牡蠣には、亜鉛が14mg /100gも含まれています。牡蠣フライ1個(約30g)なら、亜鉛は約3.6mg含まれます。そのほかの貝類、カニ・タコにも亜鉛は豊富に含まれます。
肉類も、亜鉛の良い摂取源です。特に豚レバーや牛肉、ラム肉には多くの亜鉛が含まれます。鶏肉なら、レバーや砂肝がおすすめ。また、豚肉は黒豚を選ぶと、同じ部位でも亜鉛を多く含む傾向にあります。
肉類
食品 | 亜鉛含有量 (/100g) | 食品 | 亜鉛含有量 (/100g) |
---|---|---|---|
牛肉(肩) | 5.0mg | 豚肉(ロース) | 1.6mg |
牛肉(バラ) | 3.0mg | 豚肉(バラ) | 1.8mg |
牛肉(モモ) | 3.8mg | 豚肉(モモ) | 2.0mg |
牛肉(ヒレ) | 2.8mg | 豚肉(ヒレ) | 2.2mg |
サーロイン | 3.1mg | ロースハム | 1.6mg |
リブロース | 4.7mg | ウインナー | 1.3mg |
牛タン | 2.8mg | 鶏肉(モモ) | 1.6mg |
ハラミ(サガリ) | 3.7mg | 鶏肉(ムネ) | 0.6mg |
ビーフジャーキー | 8.8mg | 鶏肉(ささみ) | 0.6mg |
魚介類
食品 | 亜鉛含有量 (/100g) | 食品 | 亜鉛含有量 (/100g) |
---|---|---|---|
まいわし | 1.6mg | 赤貝 | 1.5mg |
しらす | 1.1mg | あさり | 0.9mg |
うなぎ | 1.4mg | さざえ | 2.2mg |
さけ | 0.5~ 0.6mg | しじみ | 2.3mg |
さば | 1.1mg | つぶ貝 | 1.2mg |
さんま | 0.8mg | はまぐり | 1.7mg |
たら | 0.5mg | ほたて | 2.7mg |
ほっけ | 1.1mg | えび | 1.0~ 1.8mg |
まぐろ | 0.4~ 0.5mg | いか | 1.2~ 1.5mg |
魚介類
食品 | 亜鉛含有量 (/100g) | 食品 | 亜鉛含有量 (/100g) |
---|---|---|---|
玄米ご飯 | 0.8mg | ケール | 0.3mg |
白米ご飯 | 0.6mg | ゴボウ | 0.8mg |
食パン | 0.5mg | ブロッコリー | 0.8mg |
ライ麦パン | 1.3mg | ほうれん草 | 0.7mg |
豆腐 | 0.5~ 0.6mg | かぼちゃ | 0.3mg |
納豆 | 1.9mg | キャベツ | 0.1mg |
枝豆 | 1.4mg | アボカド | 0.7mg |
グリンピース | 1.2mg | バナナ | 0.2mg |
コンビニで手軽に亜鉛を摂取できる食べ物は?おすすめメニュー3選

コンビニで手軽に食事を済ませたいとき、どのような食べ物を選べば亜鉛をしっかり摂取できるのでしょうか。おすすめのメニューをいくつか紹介するので、参考にしてみてくださいね。
1.レバニラ
亜鉛の豊富なレバーが含まれる、いちおしメニュー。特に、豚レバーは100gあたり6.9mgの亜鉛を含むのでおすすめです。
2.砂肝
砂肝には、100gあたり2.9mgの亜鉛が含まれます。高タンパク・低脂質なので、ダイエット中にもぴったりの食品です。
3.ハンバーグ
合い挽き肉を使ったハンバーグは、100gあたり2.4mgの亜鉛が含まれます。牛肉のみを使用したハンバーグなら、さらに多くの亜鉛が摂取できますよ。
亜鉛を摂取するコツ
主食は玄米やライ麦パンをチョイスすると、亜鉛の摂取量が多くなります。また、枝豆や納豆を付け合わせるのもおすすめ。枝豆は100gで1.4mg、納豆1パックで約0.8mgの亜鉛がとれます。ブロッコリー、ゴボウ、グリンピースも亜鉛を多く含むので、これらの野菜を使ったメニューもおすすめ。
亜鉛は過剰摂取にも注意

亜鉛は、過剰摂取にも注意が必要な栄養素です。長期間にわたる亜鉛の過剰摂取は、銅や鉄の吸収阻害を起こします。
鉄が吸収阻害によって欠乏すると、貧血を招きます。銅はSODという抗酸化物質の構成成分であり、銅が欠乏するとSODの活性が低下します。
また、亜鉛の過剰摂取は糖尿病の発症リスクを高める可能性があるといわれています(*1)。
これらを防ぐために、亜鉛には耐容上限量が設けられています。
年齢 | 男性の 耐容上限量 | 女性の 耐容上限量 |
---|---|---|
18~29歳 | 40mg | 35mg |
30~74歳 | 45mg | 35mg |
75歳~ | 40mg | 35mg |
亜鉛を一度に大量摂取した場合も、吐き気や胃痛などの症状が出る可能性があります。耐容上限量より多く摂ることは避けましょう。特に、サプリメントを使う場合は摂取量に注意が必要です。
まとめ

亜鉛は、体内のさまざまな酵素の活性に関わる栄養素。亜鉛の摂取量が長期的に不足すると、種々の酵素が十分に働かなくなり、あらゆる症状が現れます。
亜鉛は健康維持のために大切な栄養素ではありますが、サプリメントなどで大量に摂取すると、かえって健康を損ねることも。耐容上限量を超えて摂取することは控えましょう。
食品選択や献立を工夫すれば、サプリメントに頼らなくてもしっかり亜鉛を摂取することができます。今回紹介した亜鉛の豊富な食品を取り入れ、健康維持に役立ててくださいね。
Writer:永田ゆかり
フードスペシャリスト
日本人は亜鉛の摂取量が少ない傾向にあるといわれています。亜鉛は生体機能を維持するために欠かせない種々の酵素の活性に関わります。なかでも、抗酸化作用をもつSODや、DNA・RNAポリメラーゼは非常に重要な酵素です。亜鉛を豊富に含む食べ物を積極的にとり、健康維持に役立てましょう。本文でも書きましたが、亜鉛をサプリメントなどから摂取する場合は、摂り過ぎにも注意してくださいね。
参考文献
*1 日本人の食事摂取基準(2025年版)
*2 池田 稔, 生井 明浩「味覚障害と亜鉛欠乏」2007
*3 荒川泰昭, 栗山 孝雄「亜鉛と生殖」2008
*4 駒井三千夫「日本人における亜鉛摂取量の現状と摂取基準」2015