この記事では、リポタンパク質とはどのような物質なのかを、わかりやすく解説します。
リポタンパク質とは
リポタンパク質とは、脂質とタンパク質の複合体です。
リポタンパク質の役割は、中性脂肪やコレステロールなどの脂質の輸送。血液の大半は水であり、水に混ざることができない脂質がそのまま血液中に放出されれば、脂質だけでかたまって血流を止めてしまう可能性もあります。
そのため、脂質が血液中を移動するためには、水となじむことのできる親水基をもつアポタンパク質やリン脂質に包まれる必要があります。
リポタンパク質は、脂質を輸送するカプセルのようなもの。中性脂肪やコレステロールは、リポタンパク質の中に組み込まれることで血液になじみ、全身を移動できるようになります。
リポタンパク質の種類
リポタンパク質は、大きく分けて4つの種類があります。
・カイロミクロン
・VLDL(超低比重リポタンパク質)
・LDL(低比重リポタンパク質)
・HDL(高比重リポタンパク質)
それぞれのリポタンパク質は、構成成分や役割が異なります。
カイロミクロン | VLDL | LDL | HDL | ||
構成 成分 | 中性脂肪 | 約85% | 約55% | 約10% | 約5% |
コレステロール | 約7% | 約19% | 約47% | 約24% | |
リン脂質 | 約6% | 約18% | 約22% | 約29% | |
タンパク質 | 約2% | 約8% | 約21% | 約42% | |
比重 | 最も軽い | 2番目に軽い | 軽い | 最も重い |
リポタンパク質を構成する成分のうち、最も比重が重いのはタンパク質です。そのため、構成成分のほとんどを中性脂肪が占めるカイロミクロンは最も比重が軽く、タンパク質を多く含むHDLコレステロールは最も比重が重くなります。
ちなみに、LDLはLow density lipoprotein(低比重リポタンパク質)、HDLはHigh density lipoprotein(高比重リポタンパク質)の頭文字をとった略称です。
リポタンパク質と脂質の代謝
食事から摂取した脂質は、小腸から吸収されたのち、小腸上皮細胞で中性脂肪に再合成され、カイロミクロンに入ります。カイロミクロンはリンパ管を経て血液に入り、全身へ中性脂肪を供給しながら徐々に小さくなっていきます。この小さくなったカイロミクロンを「カイロミクロンレムナント」といいます。カイロミクロンレムナントは肝臓に戻り、処理されます。
一方、肝臓で合成された中性脂肪やコレステロールは、VLDLに入ります。VLDLは全身へ中性脂肪を供給しながら小さくなっていき、やがてLDLに変化します。VLDLから中性脂肪が減少し、コレステロール含量が多くなったものがLDLです。
LDLは、全身の必要な部位へコレステロールを運ぶのが役割。コレステロールは、性ホルモンや副腎皮質ホルモン、ビタミンD、胆汁酸の合成などに関わります。
HDLは、LDLとは反対に、全身から過剰なコレステロールを回収するのが役割です。HDLはコレステロールを回収し、肝臓へ戻します。
リポタンパク質の種類 | 働き |
カイロミクロン | 食事由来の中性脂肪を 全身へ供給する |
VLDL | 肝臓で合成された中性脂肪を 全身へ供給する |
LDL | 肝臓で合成されたコレステロールを 全身へ供給する |
HDL | 過剰なコレステロールを 全身から回収する |
悪玉と善玉
LDLとHDLは、ぞれぞれ「悪玉コレステロール」「善玉コレステロール」と呼ばれています。
前述のように、LDLは全身へコレステロールを届ける働きをもちます。コレステロールは生体にとって重要な役割を果たすため、LDLの存在も不可欠。しかし、LDLが過剰になると、活性酸素などの影響で酸化変性し、血管壁に付着したり、傷をつけたりします。
血管壁にこびりついたLDLは、マクロファージ(免疫細胞)が異物とみなして貪食し、その残骸がプラークというコブのような物体を形成します。これによって、血流が悪くなったり血栓ができたりする動脈硬化が引き起こされてしまうのです。
一方、HDLは血管に蓄積した過剰なコレステロールを回収して肝臓へ戻すため、動脈硬化の予防に役立ちます。
このような性質・働きの違いから、LDLは悪玉、HDLは善玉と呼ばれているのです。
ちなみに、LDLは飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取によって増加し、オリーブオイルやn-3系脂肪酸の摂取によって減少するといわれています。
まとめ
リポタンパク質とは、中性脂肪やコレステロールを運ぶカプセルのようなもの。食事由来の中性脂肪はカイロミクロン、肝臓で合成された中性脂肪はVLDLによって全身へ運ばれます。
また、肝臓で合成されたコレステロールはLDLによって全身へ供給され、過剰なコレステロールはHDLによって回収されて肝臓へ戻ります。
これらのリポタンパク質は、すべて生体にとって必要なもの。しかし、HDL以外のリポタンパク質が増えすぎると、動脈硬化の発症リスクが高まります。リポタンパク質の血中濃度は食事の影響を受けるので、脂質の多すぎる食事は控え、油の質も意識するようにしましょう。
参考文献
*田地陽一編『イラストレイテッド基礎栄養学 第4版』羊土社,2021