日本の“ソウルフード”の使い方は間違い?正しい意味とは

*この記事はPRを含みます

ソウルフードと聞くと、納豆や味噌汁のように、その国や地域独自の伝統的な食べ物をイメージする方が多いと思います。しかし、日本での“ソウルフード”の使い方が、じつは間違いであることをご存じでしょうか。今回は、ソウルフードの本当の意味や歴史とともに、どのような料理を指すのかを紹介します。

スポンサーリンク

日本での“ソウルフード”の意味・使い方

ソウルフードと聞くと、納豆や味噌汁、おにぎりのように、日本独自の食べ物をイメージする方が多いと思います。また、大阪のたこ焼きや沖縄のソーキそばのように、その土地の郷土料理や伝統食を指す場合もあります。

もっと範囲を狭めて、子供の頃よく食べていた料理や家庭の味など、いわゆる“ママの味”をソウルフードだと言うこともありますよね。

このように、日本で使う「ソウルフード」は、
・日本の伝統的な食材や料理
・各地の郷土料理や伝統食
・子供の頃から慣れ親しんだ味

などを意味しています。

スポンサーリンク

ソウルフード(soul food)の本当の意味とは

次は、ソウルフードの本来の意味を見ていきましょう。日本での使い方と、どのような違いがあるのでしょうか。

ソウルフードとはアフリカ系アメリカ人の伝統的な料理のこと

ソウルフードとは、本来はアフリカ系アメリカ人の伝統的な料理を意味します。

1600年代から1865年まで続いたアメリカの奴隷制度により、奴隷として捕らわれたアフリカ人は、主にアメリカ南部の農場などで働いていました。

この頃、奴隷たちにはコーンミールやサツマイモなどの主食、豚肉や鶏肉、糖蜜などが支給されていたようです。肉類は、廃棄される部分である豚足や内臓が中心で、奴隷たちは自由時間に自ら狩猟や魚釣りも行いました。

こうして得た食料を使い、奴隷たちは肉や野菜の煮込み料理やコーンブレッドなどを作り、赤トウガラシ・タイム・ローリエなどを駆使して美味しく仕上げる工夫をしていました。

ソウルフードとは、アメリカの奴隷制度の中で生まれた、アフリカ系アメリカ人の伝統料理だったのです。なお、「ソウル」という言葉は、ソウルミュージックのようにアフリカ系アメリカ人の文化を示す際によく使われます。

ソウルフードの歴史

奴隷制度があった時代にアメリカ南部で生まれたソウルフードは、時代とともに進化していきます。

奴隷制度は約250年にわたって続き、そのあいだに奴隷たちは限られた食材を美味しく調理するための工夫を重ねました。

南北戦争が終わり、アフリカ系アメリカ人は、南部からアメリカの各地へ移動をはじめます。そこで新たに得た食材や、世界各国からアメリカへ持ち込まれた料理・調理法などを組み合わせ、ソウルフードはさらに発展します。

アフリカ系アメリカ人の作る料理は、ほかのアメリカ人や外国人からも好評で、1960年代半ばにはソウルフードが一般的な料理として確立したと言われています。

ソウルフードの例

代表的なソウルフードとして、以下の料理があります。

・フライドチキン
・キャットフィッシュフライ
・キャベツやケールの煮物
・さつまいもの甘煮
・黒目豆のスープ
・コーンブレッド
・マカロニ&チーズ
・バナナプディング
・ピーカンパイ

キャットフィッシュフライとは、ナマズをフライにしたもので、アメリカ南部でポピュラーな料理。衣にはトウモロコシ粉が使われることが多く、香ばしい甘さとナマズの淡白な味わいが楽しめます。

トウモロコシ粉とベーキングパウダーで作られるコーンブレッドも、伝統的なソウルフードのひとつ。発酵なしで簡単に作れるので、近年は日本でも人気があります。

ちなみに、ソウルフードにトウモロコシ粉がよく使用されるのには理由があり、奴隷時代には精製された小麦粉は滅多に与えられなかったため。

ソウルフードはデザートの種類も充実しており、バナナプディングやピーカンナッツなどが主に親しまれています。

なぜ日本ではソウルフードの意味が間違って広まったのか

日本とアメリカでは、ソウルフードの意味するところが全く違うことが分かりました。なぜ、日本ではソウルフードを間違った意味で使うようになってしまったのでしょうか。

ソウル = 魂 = 郷愁?

ソウルとは、日本語で「魂」や「精神」を表す言葉。この言葉のイメージから、魂が還る場所(故郷)を連想し、郷愁を覚える食べ物へとつながったのではないかと考えられます。

そういった意味では、日本でのソウルフードの使い方も、あながち間違いではないのかもしれませんね。

海外にいれば日本の食べ物に郷愁を感じますし、国内なら生まれ育った地域や家庭の味を懐かしく思うもの。それが、納豆やおにぎり、郷土料理などにあたり、ソウルフードと呼ぶようになったのでしょう。

日本のソウルフードを正しく言うなら「コンフォートフード」

日本で使うソウルフードを、同じ意味で海外の人に伝えたい場合は、「コンフォートフード(Comfort food)」と言い換えるのがおすすめです。

コンフォートフードは、子どもの頃から親しんだ食べ物や郷土料理のように、食べたときにほっとする料理、郷愁や懐かしさを連想させる料理のことを指します。

コンフォートフードには、幸福感を感じられる甘いデザートや高カロリーの食品も含まれますが、基本的には日本での「ソウルフード」とほとんど同じ意味で使うことができます。

単純に郷土料理のことを言うなら、「ローカルフード(local food)」や「ローカルディッシュ(local dish)」を使いましょう。

ソウルフードの正しい意味を知っておこう

ソウルフードは、日本とアメリカでは全く違う意味で使われています。国内で使う分には誤解は生じにくいですが、海外の人に「おにぎりは日本のソウルフードだ」と言っても「何を言っているんだ?」と思われてしまうでしょう。

海外の人に説明する際は、「コンフォートフード」や「ローカルフード」などに言い換えることで、誤解なく伝わります。また、日本人同士の会話でも正しい言葉を選びたい場合は、「郷土料理」や「伝統料理」などに言い換えるのがおすすめです。

参考サイト
食べる黒人文化「ソウルフード」を味わう American View アメリカ大使館公式マガジン
ソウルフードと南部料理の違いは何ですか? FOODLY

Written by Yukari

個人的には、日本での「ソウルフード」の使い方もアリかな、と思っています。とはいえ、本来の意味や由来を知ることも大切だと思うので、この記事を書きました。メディアが「ソウルフード」から「コンフォートフード」に切り替える日も近いかも。一足先に使い分けちゃいましょう。

※この記事では「黒人」という言葉の代わりに「アフリカ系アメリカ人」としました。奴隷制度があった当時を書くにあたり、その方が適切な表現だと判断したためです。

タイトルとURLをコピーしました