近年、ダイエットや健康維持に役立つ「機能性表示食品」が数多く販売されています。しかし、「機能性表示食品って結局何?」と疑問に思っている方も多いようです。そんな疑問を解決するため、この記事では機能性表示食品とは何か、トクホや一般的なサプリメントとの違いとともに分かりやすく解説します。
機能性表示食品とは
機能性表示食品とは、その食品を摂取することによって期待できる効果を表示して販売される食品です。
例えば、「難消化性デキストリン」には、整腸作用や糖質・脂質の吸収を緩やかにする効果があります。そのため、「難消化性デキストリン」を含む食品は、「お腹の調子を整える」「食後の血糖値上昇を抑える」「体脂肪の蓄積を抑制する」などの表示をして販売することができます。
「GABA」を含む食品であれば、「ストレスを緩和する」「睡眠の質を高める」「血圧が高めの方に」などの表示をすることが可能です。
機能性表示食品とトクホの違いは?
機能性表示食品とまぎらわしい存在なのが、「特定保健用食品(トクホ)」。この2つには、どのような違いがあるのでしょうか。
トクホは、販売するためには食品を用いて安全性・有効性を確認する臨床試験を行い、消費者庁長官の個別診査を受ける必要があります。
一方、機能性表示食品は、販売前に消費者庁に届け出する義務がありますが、あくまでも事業者の責任において販売されるものであり、国の個別診査は受けません。また、機能性表示食品は、商品を用いた臨床試験も義務ではありません。
トクホ | 機能性表示食品 | |
国の個別審査 | 必要 | 不要 |
商品による臨床試験 | 必要 | 義務ではない (臨床試験を行わない場合は 研究レビューを実施) |
販売までにかかる年数 | 莫大 | トクホより早い |
販売にかかる経費 | 莫大 | トクホより安い |
例えば、「難消化性デキストリン」が含まれるトクホと機能性表示食品のお茶があるとします。
この場合、トクホのお茶は、臨床試験を行い、お茶を被験者に何週間か飲んでもらいます。その結果を国が個別に審査し、認可されれば、確認された効果を表示して販売することができます。
一方、機能性表示食品は、臨床試験を行わなくても「難消化性デキストリン」の効果を示した既存の論文などを根拠として、効果の表示、販売ができます。分かりやすくいうと、機能性表示食品に示されているのは難消化性デキストリンそのものの効果であり、そのお茶を飲んで実際にみられた効果ではない、ということですね。
トクホは臨床試験を行い、消費者庁による個別審査を受けるため、販売までに莫大な年数と資金がかかるのがネック。よほどの大企業でないと、簡単に開発することはできません。
その弱みを解消するために誕生したのが、機能性表示食品です。機能性表示食品はトクホに比べて早く、安く開発できるのが特徴。開発に取り組む企業はもちろん、消費者にも安く商品を買えるというメリットがあります。
機能性表示食品の制度が始まったのは2015年ですが、2022年には届け出件数が5,000件を超えました。機能性表示食品には、消費者が商品を選択する際に役立つ情報を提供し、高まる健康意識に応える目的もあります。
臨床試験を行っている機能性表示食品も
機能性表示食品の場合、「難消化性デキストリン」や「GABA」のように、効果が既に広く知られている場合は、臨床試験を省略することができます。
しかし、なかには実際に販売する商品を使って臨床試験を行っている場合もあります。臨床試験を行うと、その試験で得られた結果を表示することができるので、企業側にもメリットがあります。
機能性表示食品の情報は、消費者庁の「機能性表示食品の届出情報検索」というページから確認できるので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
誇大広告に注意!「国が効果を認めた」は嘘
インターネットやアプリ上でよく見かける広告の中に、機能性表示食品を「国が効果を認めたサプリ」などと謳って販売しているものがあります。
前述のように、機能性表示食品は国が個別審査・認可しているものではありません。
つまり、「国が認めた」「効果が国に認められている」などの広告は言い過ぎです。特に、ダイエットサプリでは「体重減少効果が国・消費者庁によって認められたサプリだから安心」などと謳っているものもあります。
機能性表示食品のなかには体脂肪低減効果のある成分を含むものもありますが、痩身効果を謳うことはできません。特に「1ヶ月で10kg痩せた」「運動・食事制限なしでも痩せる」などの文句は、誇大広告として処分を受ける対象になります。過去にも誇大広告を行った数社が一斉処分を受けた事例があります。
機能性表示食品を購入する場合は、どのような成分が入っているのか、そしてその成分の効果・効能などを理解した上で購入することをおすすめします。
機能性表示食品にはどんな種類がある?
機能性表示食品には、サプリメントや飲み物、お菓子、果物、野菜、玄米、乳製品など、さまざまな食品の形態があります。また、含まれる成分や効果も多種多様です。ここでは、主な効果を例にあげ、どのような機能性表示食品があるのかみていきましょう。
1.体脂肪を減らす
ダイエット中の人にとって、「体脂肪を減らす」というフレーズは非常に魅力的。体脂肪を減らす効果を表示した機能性表示食品は種類も多く、人気もあります。
体脂肪を減らす効果のある成分として、
・ローズヒップ由来ティリロサイド
・ガレート型カテキン
・モノグルコシルヘスペリジン
・乳酸菌CP1563株由来10-HOA
・葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類として)
などがあります。
これらの成分には、食事由来の脂肪の吸収を抑制する働き、体脂肪の合成を阻害する働き、体脂肪の分解を促進する働きなどがあり、結果として体脂肪を減らす効果が期待できます。
2.腸内環境を改善する
「腸内環境を改善する」「お腹の調子を整える」などの効果のある機能性表示食品も人気があります。腸内環境を整えることで、便秘改善、免疫機能の維持、ダイエット効果などが期待できます。
腸内環境を改善する効果のある成分には、
・乳酸菌
・ビフィズス菌
・難消化性デキストリン
・ガラクトオリゴ糖
・フラクトオリゴ糖
・グアーガム分解物
・イヌリン
・小麦ブラン
・ラクチュロース
などがあります。
大きく分けると、善玉菌そのものを摂るプロバイオティクス系と、善玉菌を増やすプレバイオティクス系ですね。
プロバイオ ティクス | プレバイオ ティクス | |
・乳酸菌 ・ビフィズス菌 | 【食物繊維】 ・難消化性 デキストリン ・グアーガム分解物 ・イヌリン ・小麦ブラン | 【難消化性オリゴ糖】 ・ガラクトオリゴ糖 ・フラクトオリゴ糖 ・ラクチュロース |
乳酸菌やビフィズス菌が含まれるものは、「免疫機能の維持」「睡眠の質を高める」などの効果も一緒に表示されていることがあります。また、食物繊維が含まれるものは、「糖や脂肪の吸収を抑える」「食後の血糖値上昇を抑える」などの効果もあります。
3.免疫機能の維持をサポート
新型コロナウイルスの感染拡大を経て、免疫ケアができる機能性表示食品の人気が高まっています。
免疫機能の維持をサポートする成分として、
・プラズマ乳酸菌
・L-92乳酸菌
・酢酸菌GK-1
があります。
2020年にプラズマ乳酸菌を配合した「キリン iMUSE(イミューズ)」が登場し、数年のあいだに数多くの商品の販売が開始されました。免疫力の大切さを多くの人が実感したため、これからも免疫ケア系の機能性表示食品の人気は続きそうですね。
4.ストレス緩和・睡眠の質向上
ヤクルト1000のCMでのお馴染みの、「ストレス緩和」「睡眠の質向上」というフレーズ。近年は、メンタルヘルスケアができる機能性表示食品にも注目が集まっています。
ストレス緩和 | 睡眠の質向上 |
・GABA(γ-アミノ酪酸) ・L-テアニン ・プレミアガセリ菌CP2305 ・乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029) ・サフラン由来クロシン ・サフラン由来サフラナール ・5-アミノレブリン酸リン酸塩 | ・GABA(γ-アミノ酪酸) ・L-テアニン ・プレミアガセリ菌CP2305 ・乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029) ・L-オルニチン一塩酸塩(L-オルニチンとして) ・ラフマ由来ヒペロシド ・ラフマ由来イソクエルシトリン ・クロセチン |
これらの成分のなかで、特に多くの商品に含まれているのがGABAです。GABAには、ストレスや睡眠に対する効果だけでなく、高めの血圧を下げる効果などもあります。
5.食後の血糖値上昇をおだやかにする
日本人に多い糖尿病の発症・重症化を予防するためには、食後の血糖値を急上昇させないことがポイント。食後の血糖値上昇を穏やかにする成分には、
・難消化性デキストリン
・0.19小麦アルブミン
・サラシア由来サラシノール
・グアーガム分解物
・桑の葉由来イミノシュガー
・アカシア樹皮由来プロアントシアニジン
などがあります。
難消化性デキストリンは、食後の糖・脂質の吸収を抑える働きがあり、血糖値だけでなく、血中中性脂肪値の上昇もおだやかにしてくれます。糖尿病とともに、脂質異常症や肥満症が気になる方におすすめの成分です。
機能性表示食品について正しく知ろう
機能性表示食品について正しい知識を持っていないと、「国が認めたサプリ」などの文言に騙されてしまうことも。機能性表示食品は決して怪しい食品ではありませんが、誇大広告される可能性もあります。
トクホは臨床試験を行っていること、消費者庁による個別審査を受けていることなどのメリットがあり、機能性表示食品にはトクホより価格が安いというメリットがあります。予算や安全性に対する考え方に応じて、どちらを選ぶか決めましょう。
Written by Yukari
ネット上で流れている機能性表示食品のダイエットサプリの誇大広告がひどすぎて、この記事を書くことを決めました。機能性表示食品は、消費者の食品選びをサポートするための制度です。悪意のある広告に踊らされず、正しい食品選びをしていただけるよう願っています。