肉と魚の脂質の違いとは?魚の方が健康に良いと言われる理由

*この記事はPRを含みます

「肉の食べ過ぎは生活習慣病につながる」「魚は体に良いから食べるべき」などとよく言われますが、実際のところはどうなのでしょうか。今回は、肉と魚の脂質に焦点を当て、その違いについて紹介します。それぞれ健康へのメリット・デメリットなども紹介するので、参考にしてみてくださいね。

肉の脂質の特徴とは

まずは、肉の脂質の特徴から見ていきましょう。食べ過ぎると良くないと言われるのは、何が原因なのでしょうか。

1.飽和脂肪酸が多い

牛肉・豚肉・鶏肉など、動物の種類によって多少の違いはありますが、肉の脂質の40%程度は飽和脂肪酸が占めています。

飽和脂肪酸を摂り過ぎると、脂質異常症(特に高LDLコレステロール血症)の原因になると言われています(*1)。一方で、飽和脂肪酸の摂取量が少なすぎると脳出血を招くとの報告もあり、飽和脂肪酸の摂取量は多すぎても少なすぎても良くないとされています(*2)

そこで、飽和脂肪酸の摂取量は1日の総摂取エネルギーの7%未満にすることが目標となります。総摂取カロリーが2000kcalの場合は、飽和脂肪酸の量を15.6g(約140kcal)未満にしましょう。

これは、脂質の多い和牛サーロインステーキなら90g、豚バラ肉なら100g程度ですが、鶏むね肉なら皮付きでも280g程度にあたります。多くの量を食べたい場合は、脂質の少ない部位を選ぶのがおすすめ。

2.常温で固体

前述のように、肉には飽和脂肪酸が多く含まれていますが、これは脂質の融点にも関わります。融点とは、脂が溶ける温度ことで、肉の舌触りや美味しさに影響します。

飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸よりも融点が高いため、肉の脂質は常温で固体になります。生肉は脂身が白い塊になっていますよね。加熱調理により肉の脂は溶けますが、時間がたって冷めると再び白く固まります。

特に牛肉やラム肉の脂肪は融点が高いので、冷めたときに脂肪が固まって舌触りが悪くなります。一方、融点が人間の体温に近い豚肉や鶏肉は、口に入れると舌の上で脂肪が溶け、美味しく感じられます。

そのため、お弁当のおかずには、冷めても美味しく食べられる豚肉や鶏肉を使うのがおすすめです。

魚の脂質の特徴とは

次は、魚の脂質の特徴を見ていきましょう。肉の脂質とどのような違いがあるのでしょうか。

1.DHAやEPAが多い

魚の脂質の約60~80%は、不飽和脂肪酸で構成されています。その中でも、DHAやEPAを多く含むのが魚の脂質の特徴です。

DHAやEPAは、不足すると皮膚炎などを引き起こす可能性があることから、1日に1g以上摂取することが推奨されています(*1)。また、DHAとEPAは虚血性心疾患の予防にも効果的だと言われています。

なお、DHAやEPAを多く摂取した場合の問題点は今のところ確認されていないため、摂取量の上限は定められていません。

2.常温で液体

不飽和脂肪酸(特に多価不飽和脂肪酸)は、飽和脂肪酸より融点が低いという特徴があります。そのため、不飽和脂肪酸多く含む魚の油は常温で液体です。

寿司や刺身のように魚を冷やして食べても舌ざわりが良く美味しいのは、これが理由ですね。

3.酸化されやすい

DHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸は非常に酸化されやすいことも特徴です。魚の油が酸化されると不快臭や変色が生じ、風味も落ちます。

特にサバやイワシなどの青魚は多価不飽和脂肪酸を多く含むため、酸化の影響を受けやすくなります。

魚の油の酸化を防ぐためには、低温で保存することや、レモンのような抗酸化作用のある食材を合わせることが効果的です。

肉と魚、健康に良いのはどっち?

まず前提として、肉と魚はどちらも適量を食べる分には健康に悪影響はありません。しかし、飽和脂肪酸を多く含む肉の方が食べ過ぎによるリスクは高いと言えます。

また、魚に含まれるDHAやEPAは肉にはほとんど含まれていません。いま、肉中心の食生活を送っている場合は、肉の摂取量の半分程度を魚に置き換えてみると健康増進に役立つでしょう。

とはいえ、魚も食べ過ぎると脂質や動物性たんぱく質の過剰摂取につながるので、適量を食べるよう心がけてくださいね。

腸内環境は肉や魚の摂取に影響される

肉中心の食生活を長期間にわたって続けていると、肥満しやすい腸内フローラを形成するといわれています。一方、魚や多価不飽和脂肪酸を継続的に摂取することで、太りにくい腸内環境を維持できるようです(*3)

また、肉中心の食生活を続けると善玉菌の力が弱まり、糖尿病や肥満症などの代謝異常免疫力の低下など、さまざまな問題を起こす引き金にもなります。

肉好きは赤ワインを飲むと良い?「フレンチ・パラドックス」とは

動物性脂肪を摂り過ぎると心臓疾患のリスクを高めることが知られていますが、ここで興味深い研究データをご紹介します。

ヨーロッパ各国の動物性脂肪の摂取量と、心臓疾患による死亡率を調査した結果、イギリス人とフランス人は動物性脂肪の摂取量が同程度なのに、死亡率はフランス人の方がかなり低いことが分かりました。

この理由のひとつとして、両国の赤ワインの消費量に大きな違いがあることが挙げられています。

つまり、フランス人は赤ワインをよく飲むため、その抗酸化作用により心臓病の発症が抑えられていることが分かったのです。

この研究結果は「フレンチ・パラドックス(フランス人の逆説)と呼ばれ、ここから赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用についての研究が発展しました。

肉が好き、高脂肪食が止められない、という方は、食事に赤ワインをプラスしてみてはいかがでしょうか。

赤ワインに含まれるポリフェノール「アントシアニン」に
ついては、こちらの記事で詳しく紹介しています

結論!健康を維持するためには

今回紹介した内容をまとめると、

・肉の過剰摂取は疾病リスクを高める
・肉中心の生活を続けると肥満しやすい

 腸内環境になる
・魚の脂質に含まれるDHA・EPAは

 肉にはほとんど含まれない
・魚中心の食生活は太りにくい腸内環境

 の維持に役立つ
・肉が好きな人は抗酸化作用のある食品

 を取り入れるとgood

肉の過剰摂取はさまざまな問題を引き起こすため、適量に抑えることが大切です。

一方、魚に含まれる多価不飽和脂肪酸は基本的には体に良い作用を示しますが、「摂れば摂るほど良い」という訳ではないので、こちらも適正な摂取が大切です。また、魚の油は酸化されやすいので、保管にも注意してくださいね。

肉を食べ過ぎていると感じる方は、赤ワインのような抗酸化作用のある食品を取り入れるのもおすすめですよ。

注・参考文献
(*1) 日本人の食事摂取基準, 厚生労働省
(*2) 飽和脂肪酸の摂取基準の考え方, 江崎 治ら,

  日本栄養・食糧学会誌(2007), 60巻1号
(*3) 腸脳連関と生活習慣病, 益崎 裕章ら,

  日本抗加齢医学会雑誌 Vol.14 No.6

Writer Profile
yukari

食生活アドバイザー。玄米と魚の組み合わせは腸内環境を良くするという論文を読んでから、なるべく献立に取り入れています。玄米食を続けていると、動物性脂肪への嗜好性も低くなるのだとか。面白いですね!

タイトルとURLをコピーしました