酒粕は、美容や健康維持に役立つことで近年注目されています。今回は、酒粕に含まれる成分とともに、その効果・効能をご紹介。酒粕の美味しい食べ方、酒粕を毎日食べ続けた結果なども紹介するので参考にしてくださいね。
酒粕とは

酒粕は、日本酒や清酒をつくる際に出る絞りかすです。
日本酒や清酒は、蒸したお米・酵母・麹菌・水などを熟成させ、ろ過して液体と固形分に分けます。こうして分離した液体がお酒となり、残った固形分が酒粕と呼ばれています。
酒粕が肌に良いのはなぜ?酒粕に含まれる成分と効果・効能

”かす”と呼ばれてはいるものの、酒粕は美容効果が高い優秀な食材。酒粕が肌に良いといわれる理由を、含有成分の効果・効能とともに紹介します。
1.グルコシルセラミド
グルコシルセラミドは、体内でセラミドを合成する働きを促進します。セラミドは皮膚の角質層の細胞間脂質の成分で、セラミド合成が高まると、肌のバリア機能の向上につながります。(細胞間脂質とは、細胞と細胞の隙間を満たす液体です)
また、グルコシルセラミドには肌内部の水分を逃がしにくくする作用があり、保湿力を高める効果が期待できます。
グルコシルセラミドについて詳しく知りたい方は、以下の記事を読んでみてくださいね。
2.ビタミンB群
酒粕には、ビタミンB群が多く含まれています。酒粕100g あたりに含まれるビタミンB群の量を、以下の表に記しました。
ビタミンB1 | 0.03mg |
ビタミンB2 | 0.26mg |
ビタミンB6 | 0.94mg |
ナイアシン | 2.0mg |
パントテン酸 | 0.48mg |
葉酸 | 170㎍ |
ビタミンB群は、糖質・タンパク質・脂質の代謝をサポートする栄養素。ビタミンB群が不足すると、疲労感や口内炎など、さまざまな不調が生じます。
ビタミンB2・B6・ナイアシンは、皮膚炎の予防に効果的なので、きれいな肌を保つために積極的に摂りたい栄養素です。
また、葉酸は貧血予防や細胞の新生にかかわるビタミンで、妊娠初期にはしっかり摂取するよう推奨されています。
3.食物繊維
酒粕には、食物繊維も豊富に含まれています。酒粕と他の食品の100gあたりの食物繊維の量を比較しました。
酒粕 | 5.2g |
甘酒 | 0.4g |
白ご飯 | 1.5g |
玄米ご飯 | 1.8g |
レタス | 1.1g |
キャベツ | 1.8g |
りんご | 1.9g |
バナナ | 1.1g |
それぞれの食品の1食あたりの量は違うものの、酒粕には比較的多くの食物繊維が含まれることが分かります。
酒粕大さじ1(約15g)に含まれる食物繊維の量は0.78gです。味噌汁やホットミルクなどに酒粕を加えると、美味しく手軽に食物繊維を補うことができますよ。
食物繊維には腸内環境を整える効果があります。腸内環境が悪化すると腐敗物質が産生・吸収されて全身をめぐり、肌トラブルを起こしやすいと言われています。日頃から食物繊維を積極的に摂り、肌トラブルを防ぎましょう。
ちなみに、食物繊維には糖や脂質の吸収をおだやかにする作用もあるので、生活習慣病や肥満の予防にも役立ちます。
4.レジスタントプロテイン
レジスタントプロテインとは、人間の胃腸で消化・吸収されないタンパク質のことです。
通常、タンパク質は消化酵素によって胃で分解され、小腸で吸収されます。一方、レジスタントプロテインは分解されずに小腸へ送られ、食物繊維に似た働きをするのが特徴です。
レジスタントプロテインには腸内環境を整える作用や、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの疾病を予防する効果があります。
また、レジスタントプロテイン含有の甘酒を4週間飲み続けた結果、肌の水分量が上がったとの研究結果も報告されています(*1)。
5.グルタチオン
グルタチオンは3つのアミノ酸が結合した成分で、強力な抗酸化作用を持っています。
肌の最大の敵ともいえる活性酸素を除去し、細胞をダメージから守るため、美肌効果が期待できます。
また、グルタチオンは、肝臓でアレルギー物質を解毒する際にも必要となる成分です。
美肌効果だけじゃない!酒粕に含まれる成分の健康効果

ここまでは、美肌作りにかかわる酒粕の成分を紹介しましたが、酒粕には健康維持や疾病予防に役立つ成分も多く含まれています。ここからは、健康にかかわる酒粕成分の効果・効能をみていきましょう。
1.ACE阻害ペプチド
ACEとは、血圧上昇作用を持つ物質(ATⅡ)を生成する酵素です。このACEの働きを阻害することで、血圧を下げる効果が得られます。
酒粕には、ACEを阻害するペプチドが含まれるため、高血圧の予防に役立ちます。
なお、ペプチドとはタンパク質が分解される途中の成分で、アミノ酸がいくつか連なったものです。酒粕中の酵素がタンパク質を部分的に分解することで、このペプチドが生じると考えられています。
2.PEP阻害ペプチド
PEP阻害ペプチドには、健忘症(物忘れなど)を抑制する効果が期待できます。
動物実験では、PEP阻害ペプチドにより、学習能力低下を抑制する効果が認められています(*2)。
3.S-アデノシルメチオニン (SAMe)
S-アデノシルメチオニン(SAMe)は、人間の体内にもともと存在する成分。近年の研究では、SAMeがうつ病の予防に役立つ可能性が示されています。
酒粕には、最大で豚レバーの 116倍ものSAMeが含まれており、これは1日20g の酒粕の摂取によってうつ病の予防効果が期待できるレベルだといわれています(*3)。
まだ研究中ではありますが、SAMeは肝疾患や変形性関節症への効果も期待されています。
酒粕はアミノ酸スコア100!

酒粕には、お米由来のタンパク質やアミノ酸も含まれています。
体内で生成することができない必須アミノ酸が、その食品にどれだけバランス良く含まれるかは「アミノ酸スコア」で表します。酒粕のアミノ酸スコアは、肉や魚と同じ100で、タンパク源として優れています。
酒粕は酵素の作用でタンパク質の一部がアミノ酸に分解されているため、効率よく体内へ吸収されるのも嬉しいポイントです。
タンパク質は、アミノ酸が多数連なって構成されています。アミノ酸スコアは、遊離しているアミノ酸だけでなく、タンパク質を構成するアミノ酸も含めて算出します。
タンパク質は酵素によってアミノ酸に分解されてから体内へ吸収され、タンパク質に再合成されて各組織・細胞の成分となります。酒粕には麹菌由来の酵素が含まれ、すでにタンパク質の一部がアミノ酸に分解されているため、素早く体内へ吸収されます。
酒粕を毎日食べ続けた結果

ここで、酒粕を毎日食べ続けた実験結果を紹介します(*4)。
実験内容
1日の摂取量:酒粕50g
摂取の方法:酒粕に水250mlと甘味料を加えて
加熱し甘酒として摂取(141kcal)
実験参加者:男性5名(平均年齢41歳)
女性7名(平均年齢39歳)
実験期間:3週間
この実験の結果、体重や体脂肪率に大きな変化はなかったものの、
・LDL(悪玉コレステロール)の数値が低下した
・HDL(善玉コレステロール)の数値が増加した
・排便回数、排便量が増えた
・肌の水分量が上がった
・肌のキメが整った
などの変化が確認されました。
肌への効果は、酒粕に含まれるグルコシルセラミドやアミノ酸の働きだと考えられます。食物繊維やレジスタントプロテインの整腸作用により、栄養素を効率よく吸収できるようになったことも大きいですね。
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酒粕の美味しい食べ方・使い方

酒粕は、以下のようにさまざまな使い方ができます。
・鍋や味噌汁に入れる
・肉や魚の下味に使う
・煮物に入れる
・甘酒にする
・パンやお菓子作りの際に使う
・そのまま焼いて食べる
酒粕にはうま味を持つ遊離アミノ酸が豊富に含まれるため、料理に入れると味わいに深みが出て、より美味しく仕上がります。肉や魚に揉み込むと、食感を柔らかくする効果も得られますよ。
また、パンやお菓子をふんわりと柔らかい食感に仕上げたいときにも、酒粕が役立ちます。特に、発芽玄米を原料とする清酒の酒粕を使うと、時間がたってもパンやお菓子の食感が保たれるのでおすすめです。
シート状の酒粕は、そのままトースターやオーブンで焼いて食べても美味しいですよ。
酒粕は美容や健康維持に役立つ優れた食材!

甘酒や粕汁、粕漬けなど、酒粕は古くから日本の食卓に寄り添ってきました。近年は清酒の消費量が減り、酒粕の生産量も減少傾向にあります。
酒粕は、ビタミンや食物繊維、レジスタントプロテインなどさまざまな成分が含まれる栄養価の高い食材です。中でも、肌の水分量を高める成分として近年注目されているグルコシルセラミドは、特定保健用食品(トクホ)の成分にも認められています。
天然の美容薬ともいえる酒粕を食事に取り入れ、美しい肌を作っていきましょう!
Written by yukari
食生活アドバイザー・日本化粧品検定1級保有。
酒粕を入れた味噌汁が大好きで、ほぼ毎日飲んでいます。そのおかげか、肌トラブルに悩むことが少なくなりました。酒粕は”かす”などではなく、栄養価の優れた理想的な食材。日本の伝統的な発酵技術によって生まれた宝物を、次の世代へとつなげていきましょう!
参考文献
*1 digitalpr.jp「角質水分量が、レジスタントプロテイン高含有の米麹甘酒の飲用で増加」
*2,3 峰時俊貴「酒粕の機能特性とそれを活かした商品開発」
*4 渡辺敏郎「健康と美容に貢献する「酒粕」の成分」
・厚生労働省「S-アデノシルメチオニン (SAMe)」
・小木曽加奈ら「発芽玄米酒粕添加が製パンに及ぼす影響」