近年、人気が高まっている低アミロース米ですが、どのような特徴を持ったお米なのでしょうか。今回は、低アミロース米の特徴やメリット・デメリットを紹介します。炊き方のコツやおすすめの品種なども併せて紹介するので参考にしてみてくださいね。
そもそもアミロースとは何?

お米の主成分は、炭水化物である「でんぷん」です。お米のでんぷんは「アミロース」と「アミロペクチン」の2種類があります。
アミロースは、グルコース(ブドウ糖)が1本の鎖状につながったもの。一方、アミロペクチンは、アミロース同士が繋がって枝分かれした構造になっています。

低アミロース米とは、一般的なお米に比べてアミロースが少なく、アミロペクチンが多いお米です。
アミロペクチンは、アミロースより粘りが強く、冷めても硬くなりにくい特徴があります。
そのため、アミロペクチンを多く含む低アミロース米は、もちもちして軟らかい食感になります。低アミロース米は、うるち米ともち米の中間的な品種だと考えると分かりやすいですよ。
普段食べているお米(うるち米)はアミロースを約20%、アミロペクチンを約80%含んでいますが、もち米はアミロースを含まず、アミロペクチン100%です。そのため、もち米は粘りが強く、もちもちとした食感になります。
ちなみに、インディカ米は日本米に比べてアミロース含有量が多いため、粘りが少なくパラッとした食感になります。ピラフやリゾットなどにインディカ米を使うと美味しく仕上がるのは、これが理由です。
低アミロース米の3つのメリット
低アミロース米は、普通のお米より軟らかくもちもちとした食感が特徴ですが、ほかにもメリットはあるのでしょうか?ここでは、低アミロース米のメリットを3つ紹介します。
1.冷めても美味しい

低アミロース米の最大の特徴が、冷めても硬くなりにくく、美味しく食べられるところです。
お米を炊くとでんぷんが水分を含んで軟らかくなりますが、炊いたお米を放置すると硬くパサついた食感になりますよね。これを「でんぷんの老化」と言います。そして、でんぷんの老化はアミロース含量が多い方が起こりやすいと言われています。
低アミロース米は、お弁当やおにぎり用に使うと、特に違いが分かりやすいですよ。
2.もち米の代わりに使える

低アミロース米は、粘りが強くもちもちした食感なので、もち米の代わりにお赤飯やおこわに使うこともできます。
コラム02:もち米より低アミロース米の方が血糖値は上がりにくい?
お米は、アミロペクチンの割合が多いほど食後の血糖値が上がりやすいと言われています。つまり、高アミロース米 → 一般的なお米 → 低アミロース米 → もち米の順番に血糖値が上がりやすくなります。これは、アミロペクチンの方が消化酵素による分解を受けやすく、アミロースより消化が早く進むためです。個人差はありますが、もち米より低アミロース米の方が血糖値の上昇はゆるやかになると考えられます。
3.消化が速い

低アミロース米は、消化のスピードが普通のお米より速いという特徴があります。そのため、消化機能の未熟な子どもや、胃腸の調子がすぐれないときの食事に適したお米です。
また、低アミロース米は軟らかくて飲み込みやすいので、咀しゃく・えん下機能が低下した方の食事としてもおすすめです。
冷めても美味しい!低アミロース米のおすすめランキングTOP3
ここからは、おすすめの低アミロース米の品種を紹介します。もちもちした柔らかい食感が楽しめますよ。
1.ミルキークイーン
ミルキークイーンは、より美味しく粘りの強いお米を作るためにコシヒカリから改良された品種です。栽培地域や気温により異なりますが、アミロース含量は10%前後で、コシヒカリの半分程度だと言われています。
茨城県や新潟県を中心に東北地方での栽培が盛んですが、全国的に広く栽培されています。低アミロース米といえばミルキークイーン、というほど代表的な品種です。
2.ゆめぴりか
ゆめぴりかは、「美味しいお米を作るのは不可能」だと言われた北海道で、約10年かけて開発された品種です。軟らかくもっちりとした食感や強い甘味、そして炊き上がりの美しさが高く評価され、多くのファンから愛されています。
より美味しいゆめぴりかを選びたい方は、栽培基準を満たしたものにだけ与えられる「ゆめぴりか認定マーク」がパッケージについているかチェックしましょう。
3.おぼろづき
おぼろづきも北海道で生まれたお米ですが、北海道米の中でも特にアミロース含量が低いと言われています。甘さはゆめぴりかより控えめで、あっさりした食味が好きな方におすすめの品種です。
低アミロース米のデメリット

低アミロース米は水分を含みやすく、食感も柔らかいので、炒飯やピラフなどに使うとベチャベチャした食感になってしまいます。カレーや丼物、リゾットなどにもあまり向いていません。
また、酢飯を作る場合も低アミロース米ではなく硬めのお米の方がおすすめです。ちなみに、酢飯は砂糖の保水作用によって硬くなりにくいので、普通のお米で作った場合でも冷めても美味しく食べられます。
なお、低アミロース米は、一般的なお米に比べて血糖値が上昇しやすいというデメリットもあります。特に、糖尿病の方や、血糖値が気になる方には、低アミロース米より高アミロース米がおすすめです。
低アミロース米を美味しく炊くコツは「水加減」

低アミロース米を炊く際は、普通のお米を炊くより少なめの水加減にしましょう。
通常だと1合のお米に対して200mlのお水を入れますが、低アミロース米の場合は1合に対して180ml程度の水加減がおすすめです。炊飯器の場合は、目盛りまで水を入れた後で大さじ1杯強の水をすくい取るとちょうど良い水分量になります。
なお、低アミロース米をお鍋で炊く際は、普通のお米と同様に30分~2時間ほど浸水させると美味しく炊き上がります。炊飯器の通常コースなら、浸水なしでも大丈夫です。
低アミロース米を食べてみよう

今回は、低アミロース米のメリットやデメリット、おすすめ品種ランキングなどを紹介させていただきました。低アミロース米は冷めても美味しく食べられるので、お弁当やおにぎりに活用してみてくださいね。また、お赤飯やおこわにしたり、普通のお米と混ぜて炊いたりするのもおすすめですよ。
Written by Yukari
食生活アドバイザー。記事のなかで「低アミロース米は血糖値が上がりやすい」と書きましたが、実際は一緒に食べる食品の影響も受けるので、糖尿病の方でも低アミロース米を食べてもそれほど問題ないかと思います。気になる方は、かかりつけの医師に相談してみてくださいね。ちなみに、血糖値コントロールをするなら、玄米や雑穀米、もち麦などを加えるのがおすすめです。
参考文献
・菅原龍幸監修『新版 食品学Ⅱ』, 建白社, 2018