多くのビタミンC配合サプリには、1日分に1,000mg以上のビタミンCが含まれています。しかし、ビタミンCはそんなに摂る必要があるのでしょうか?この記事では、ビタミンCの1日の摂取量の目安や、摂りすぎたときのデメリット・過剰症などについて紹介します。
ビタミンCの1日あたりの摂取量の目安は?
成人男女のビタミンCの推奨摂取量は、1日あたり100mgです。
日本で唯一、栄養素の摂取量の基準を示した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンCの摂取量を以下のように定めています。
推定平均必要量 | 推奨量 | |
1~2歳 | 35mg | 40mg |
3~5歳 | 40mg | 50mg |
6~7歳 | 50mg | 60mg |
8~9歳 | 60mg | 70mg |
10~11歳 | 70mg | 85mg |
12~64歳 | 85mg | 100mg |
65歳以上 | 80mg | 100mg |
ただし、喫煙者・受動喫煙者はビタミンCの消費量が多いので、推奨量より多めの摂取を心がけましょう。
また、妊娠中は+10mg、授乳中は+45mgを目安にしてくださいね。
推定平均必要量とは、ある集団において、50%の人が必要量を満たすと考えられる摂取量です。つまり、ビタミンCの場合は85mgを摂取していれば、日本人の成人の半数は必要量を満たせるだろう、ということですね。言い換えると、半数の人は満たせない可能性があるということです。
一方、推奨量は、ある集団において97~98%の人が必要量を満たすと考えられる摂取量です。推奨量以上の摂取量であれば、ほとんどすべての人が必要量を満たせると考えられています。
推定平均必要量と推奨量が示されている場合、推奨量を目安にすると、より健康維持に役立ちます。
ちなみに、どちらも摂取量がそれ以下になったからといって、すぐに欠乏症が生じるわけではありません。あくまでも目安として、「1日くらい足りない日があっても、数日で帳尻が合えば大丈夫」と気楽に考えましょう。
ちなみに、ビタミンCは1日に10mg以上摂っていれば欠乏症は生じないとされています(*1)。
1日に1,000mg以上のビタミンCを摂取するのは意味ない?
現在販売されているビタミンCサプリのほとんどは、1日分に1,000mg以上のビタミンCが含まれています。どのサプリを見ても1,000mg以上配合されていると、「こんなに摂らないといけないのかな…」と考えてしまいますよね。
しかし、ビタミンCは1日に1,000mgも摂らなくて大丈夫です。
前述の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも、以下のように明記されています。
ビタミンCの摂取量と吸収や体外排泄を検討した研究から総合的に考えると、通常の食品から摂取することを基本とし、通常の食品以外の食品から1 g/日以上の量を摂取することは推奨できない。
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』第一出版,2020,p247
「通常の食品以外の食品」とは、サプリや機能性表示食品などのことですね。個人差はありますが、ビタミンCは食事からも摂取しているので、サプリで補う分は40~50mg程度でも十分です(*2)。
また、食事摂取基準には「1,000mgを超えるビタミンCの摂取は意味がない」ともはっきり書かれています。
ビタミンCの過剰摂取によるデメリット・過剰症は?
ビタミンCのような水溶性ビタミンは、摂りすぎても尿として排出されることから、過剰症の恐れはないとされています。そのため、「多く摂っても大丈夫」と考えてしまう方も多いでしょう。
しかし、これはあくまでも自然由来の食品から摂取した場合です。サプリなどでビタミンCを摂取すると、通常の食品では考えられないほど高濃度のビタミンCでも簡単に摂ることができてしまいますよね。
ビタミンCを過剰摂取すると、消化管障害や腎障害を引き起こす恐れがあると懸念されています。
特に多いのが、ビタミンCの過剰摂取による吐き気・下痢・腹痛といった胃腸トラブルです。
また、腎機能障害のある方は、ビタミンCを過剰摂取すると尿路結石や高シュウ酸血症のリスクが高まるため、注意が必要です。腎機能が弱い方、尿路結石の既往歴がある方は、特に気を付けましょう。
アメリカではビタミンCは1日2,000mgが上限量
日本ではビタミンCの摂取量に上限を設けていませんが、アメリカでは2,000mgを超えるビタミンCの長期的摂取は健康への悪影響を増大させる可能性があるとして摂取上限量を2,000mgとしています(*3)。
ビタミンCの過剰摂取による影響は未知数な部分が多いため、少なくとも、サプリからの摂取量は2,000mgを超えないようにすることをおすすめします。
ビタミンCの摂りすぎは推奨できない
以上のことから、ビタミンCを必要以上に摂ることはおすすめできません。
美しいモデルさんや芸能人の方が、「1,000mgのビタミンCが配合されたサプリを1日に何包も飲んでいる」と発信しているのを見かけることもあります。そういった情報を目にするとつい真似したくなってしまいますが、健康上のリスクも考え、必要量のビタミンCを摂るように心がけましょう。
繰り返しになりますが、ビタミンCの1日の摂取推奨量は100mgで、日本人の成人男女の平均的なビタミンC摂取量は1日あたり約60mgです。サプリはあくまでも、食事で摂りきれない栄養素を補うためのものとして補助的に活用し、過剰摂取はなるべく避けましょう。
Written by Yukari
ビタミンCの吸収率は約90%と高いのですが、1日に1,000mg以上摂ろうとすると吸収率は50%程度に落ちます。これは、体内のビタミンC濃度を保つための仕組みです。1日に80~100mg程度のビタミンCを摂取したときの血中濃度で、十分な抗酸化作用が期待できることが疫学研究で示されています(*4)。また、コラーゲン生成不足による壊血病も、1日に10mg以上のビタミンC摂取で予防できます。今回の記事を書くにあたり、ネット上で「美容のためには1日1,000mg以上のビタミンCが必要」というものを複数読みましたが、いずれも科学的根拠が示されていなかったため、記事のなかでは触れませんでした。
*1 『日本人の食事摂取基準(2020年版)』第一出版,2020
*2 「令和元年 国民健康・栄養調査」において、15-19歳以外の年代における男女のビタミンC摂取量が約50~60mgであることを根拠として提示した
*3 厚生労働省 eJIM「ビタミンC」
*4 Gey.KF「Vitamins E plus C and interacting conutrients required for optimal health」