トランス脂肪酸の影響とは?体に悪いと言われる理由

トランス脂肪酸は、健康に悪影響を与える成分として摂取量の低減が呼びかけられています。しかし、トランス脂肪酸は、ほかの脂肪酸と何が違うのでしょうか。今回は、トランス脂肪酸がどのような成分なのか、そして体に悪いといわれる理由やその影響について紹介します。

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トランス脂肪酸とはどんな成分?健康への影響は?

まずは、トランス脂肪酸がどのような成分なのか、健康への影響とともに紹介します。

トランス脂肪酸とは

トランス脂肪酸には、天然由来のものと、人工由来のものがあります。

天然のトランス脂肪酸は、牛・ヤギ・羊のような反すう動物の体内で生成されるため、これらの動物の肉や乳製品などに含まれます。通常の摂取量であれば、天然由来のトランス脂肪酸は健康への害はないと考えられています。

一方、人工由来のトランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどの加工油脂を作る際に生成されます。また、食用油を精製する際の高温処理においても、トランス脂肪酸が生じます。

このように、食品を加工する途中で作られた人工由来のトランス脂肪酸は、動脈硬化や冠動脈性心疾患のリスクを高めることが分かっています。

トランス脂肪酸の健康への影響

現時点で明らかにされているトランス脂肪酸の健康への影響は、以下の通りです(*1)

・LDL(悪玉)コレステロールを増やす
・HDL(善玉)コレステロールを減らす
・動脈硬化のリスクを高める
・心血管疾患のリスクを高める

・肥満や糖尿病を引き起こす
・アレルギー性疾患のリスクを高める

トランス脂肪酸は、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールを増やすとともに、善玉であるHDLコレステロールを減らす作用が確認されています。

血管内にLDLコレステロールが増加すると、LDLが血管の内膜を傷つけ、そこにLDLが入り込みます。そのLDLが酸化すると、体内の免疫細胞が次々に捕食し、やがて崩壊します。その結果、血管にコブのような「プラーク」ができ、血液の通り道が狭くなる動脈硬化を引き起こします

動脈硬化は、心血管疾患や脳梗塞など、さまざまな疾病の引き金になります。特に、トランス脂肪酸の摂取により冠動脈性心疾患のリスクが高まることは、確かなようです。

そのほか、トランス脂肪酸の摂取は、肥満・糖尿病などの生活習慣病や、アレルギー性疾患の発症との関連も認められています。

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トランス脂肪酸はなぜ体に悪い?

脂肪酸とは、脂質を構成するパーツのようなもの。脂肪酸は大きく分けて、「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」の2種類がありますが、トランス脂肪酸は「不飽和脂肪酸」の一種です。

一般的に、不飽和脂肪酸はLDL(悪玉)コレステロールを減らす作用などがあり「体に良い油」とされています。では、なぜトランス脂肪酸は体に悪いのでしょうか。

トランス脂肪酸の構造

脂肪酸は、炭素が鎖のように連なった構造をしています。飽和脂肪酸は炭素がまっすぐ繋がった構造、不飽和脂肪酸は途中で折れ曲がった構造をしています。

この折れ曲がったところは、炭素同士が二重結合をしている部分です。

通常の不飽和脂肪酸は「シス型」といい、二重結合を挟んで同じ側に炭素があります。シス型に対し、トランス脂肪酸は炭素と水素の位置が反対になります。

ほんの少しの違いですが、この差により、体内に入ったときにシス型とトランス型でまったく異なる作用を示します。

なお、牛や羊などの動物の体内で作られる天然由来のトランス脂肪酸は、体内で違う脂肪酸に転換されやすいため、健康への害が少ないようです。

1日何グラムまで?トランス脂肪酸の摂取量の目安

トランス脂肪酸の摂取量は、1日の総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるように呼びかけられています。この量は、天然由来・工業由来の両方を合わせたものです。

総エネルギー摂取量には個人差があるので、下の表でトランス脂肪酸の摂取量の目安を確認してみてくださいね。

総エネルギー
摂取量
1,600kcal1,700kcal1,800kcal1,900kcal2,000kcal2,100kcal2,200kcal2,300kcal2,400kcal
トランス脂肪酸
の摂取量
1.7g1.8g2.0g2.1g2.2g2.3g2.4g2.5g2.6g
※脂質1gあたり9kcalとして計算

なお、成人の平均的な総エネルギー摂取量は、約1,900kcalです。どれくらいエネルギーを摂取しているか分からない場合は、トランス脂肪酸を2g未満に抑えるようにしましょう

食品のトランス脂肪酸の量は、下の記事で紹介しています。

バターとマーガリンはどっちを選ぶべき?

バターに多く含まれる飽和脂肪酸は、トランス脂肪酸と同じようにLDLコレステロールを増やし、動脈硬化や循環器系疾患のリスクを高める成分です。

しかし、飽和脂肪酸より、トランス脂肪酸の影響の方が大きいといわれています。また、飽和脂肪酸の中には、LDLコレステロールの増加に関与しないものもあります。

マーガリンやファットスプレッドなどの加工油脂は、飽和脂肪酸の量は少ないので、健康に良さそうなイメージがあります。しかし、トランス脂肪酸のリスクを考えると、バターを選んだ方が健康維持に役立つでしょう。

近年は、トランス脂肪酸の低減に取り組むメーカーが増え、トランス脂肪酸ゼロのマーガリンやファットスプレッドも販売されています。バターの代用品として使うなら、トランス脂肪酸ゼロの商品を選ぶことをおすすめします。

トランス脂肪酸は摂取量に注意しましょう

トランス脂肪酸は、動脈硬化や冠動脈性心疾患のリスクを高める成分です。政府でもトランス脂肪酸の摂取量を減らすように呼びかけ、食品メーカーや消費者の意識も高まっています。トランス脂肪酸ゼロの食品も多く販売されているので、賢く選んでいきましょう。

参考文献
*1 農林水産省「トランス脂肪酸の摂取と健康への影響

・山内康生「食品中のトランス脂肪酸-乳脂質を中心に-
・食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸
・松沢 厚「トランス脂肪酸による毒性発現の分子メカニズムと関連疾患の発症予防

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