「この野菜って常温保存?それとも野菜室?」そんなふうに悩むことはありませんか?野菜ごとに保存に適した温度がありますが、それをすべて把握するのは大変。そこで今回は、野菜の保存方法を一覧表にまとめました!冷凍保存できる野菜や、保存の際のコツも併せて紹介するので参考にしてみてくださいね。
野菜の保存方法一覧表!
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野菜は、基本的に低温で保存することで鮮度が保てますが、温度が低すぎると品質が低下するものもあります。常温保存した方が良い野菜と、冷蔵庫(野菜室)で保存した方が良い野菜を一覧表にまとめました。
常温保存した方が良い野菜 | 冷蔵庫(野菜室)に 入れた方が良い野菜 |
---|---|
・アボカド ・かぼちゃ(丸ごと) ・きゅうり ・ナス ・オクラ ・ピーマン ・ししとう ・ゴーヤ ・さつまいも ・トマト ・インゲン豆 | ・カットした野菜 ・アスパラガス ・ほうれん草 ・小松菜 ・ブロッコリー ・レタス ・キャベツ ・もやし ・きのこ類 ・大根 ・白菜 ・にんじん ・じゃがいも ・玉ねぎ ・パプリカ |
冷蔵保存か常温保存かの違いは、低温への耐性によります。表の左側(常温保存)の野菜は、低温への耐性が低いので、冷蔵庫に入れると品質低下の原因になります。一方、右側(冷蔵保存)の野菜は、低温への耐性が比較的高いため、冷蔵保存することで日持ちが良くなります。
冷蔵庫で保存する野菜は、ラップで包むか、ポリ袋などに入れて乾燥や酸化を防ぎましょう。小松菜・ほうれん草・アスパラガスなどは、葉先(穂先)を上に向けて立てた状態で保存するのがおすすめです。
じゃがいもは常温保存のイメージがありますが、低温への耐性があり、低温保存により発芽を抑え、有毒なソラニンの産生を抑えることができるので、野菜室での保存がおすすめです。
なお、種類にかかわらず、カットした野菜は傷みやすいので必ず冷蔵庫で保存しましょう。
かぼちゃは丸のままなら常温保存が適していますが、カットした状態で売られているものは傷みやすいので野菜室で保存しましょう。保存する際はワタと種を取り除き、キッチンペーパーで水分を拭き取ってからラップに包みます。かぼちゃは低温で長く保存すると変色や陥没が起こるので、早めに食べましょう。
低温障害とは?冷蔵庫に入れない方が良い野菜・果物一覧表
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低温障害とは、野菜を低温で保存した際に、黒ずみやクレーター状の陥没などができることです。低温障害を起こすと、見た目が悪くなるだけでなく、味や香りも変化することがあります。
低温障害を起こす野菜・果物の種類と、低温障害が起きる温度を一覧表にまとめました。
野菜の種類 | 低温障害が 起こる温度 | 果物の種類 | 低温障害が 起こる温度 |
---|---|---|---|
インゲン豆 | 8~10℃ | アボカド | 5~10℃ |
オクラ | 6~7℃ | オレンジ | 2~7℃ |
かぼちゃ | 7~10℃ | グレープフルーツ | 8~10℃ |
きゅうり | 7~8℃ | 夏みかん | 4~6℃ |
さつまいも | 9~10℃ | バナナ | 12~14.5℃ |
里芋 | 3~5℃ | パパイヤ | 7~8.5℃ |
冬瓜 | 3~4℃ | マンゴー | 7~10℃ |
トマト | 未熟果:12~13℃ 熟果:7~9℃ | 桃 | 2~5℃ |
ナス | 7~8℃ | りんご | 0~3.5℃ |
ピーマン | 6~8℃ | スイカ | 4~5℃ |
長いも | 0~2℃ | メロン | 1~10℃ |
一覧表をみると分かるように、野菜・果物の種類によって、低温障害が起こる温度は異なります。
冷蔵庫の野菜室は7~10℃程度なので、この温度帯で低温障害を起こす野菜・果物は常温保存の方が適しています。
例えば、さつまいもやかぼちゃなどは、比較的高い温度で低温障害を起こすため、なるべく常温で保存しましょう。反対に、里芋や冬瓜、長いもなどは、低温障害を起こす温度が低いので、野菜室であれば品質を保ちながら保存することができます。
なお、低温障害の起こりやすさは、貯蔵期間にも影響されます。長く保存するほど低温障害が起こりやすくなるので注意しましょう。
また、短期間であれば冷蔵庫で冷やしても低温障害は起こらないため、きゅうりやトマトなどは食べる少し前から冷やしておくのがおすすめです。
低温障害が起こりやすい野菜・果物以外は、基本的に野菜室で保存しましょう。低温障害を起こしやすい野菜・果物も、短期間なら冷蔵庫へ入れて冷やしてもOKです。
冷蔵室はなぜNG?野菜室との違い
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野菜の保存のために作られた「野菜室」。野菜室は、普通の冷蔵室より温度や湿度が高く設定されています。
メーカーや機種により違いはありますが、一般的に、冷蔵室は0~5℃、野菜室は7~10℃前後です。また、湿度は冷蔵室が20~30%、野菜室は85~95%程度に調節されています。
つまり、野菜室で保存した方が、低温障害が起こりにくく、乾燥も防ぐことができます。
しかし、細菌の増殖を抑えるためにはより温度の低い冷蔵室の方が効果的なので、食べかけの野菜やサラダ、消費期限の近いもやしなどは冷蔵室での保存がおすすめです。
冷凍保存に向いている野菜は?
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野菜を長期保存するには、冷凍保存もおすすめ。しかし、冷凍・解凍すると水分が流出して美味しくなくなってしまうこともありますよね。
これは、冷凍することで野菜の組織が破壊され、内部の水分や旨みが抜けてしまうため。野菜を冷凍すると品質の低下は避けられませんが、比較的品質が保たれやすい冷凍向きの野菜もあります。
冷凍保存に向いている野菜
・ブロッコリー
・里芋
・枝豆
・トウモロコシ
・ほうれん草
・小松菜
・きのこ類
・もやし
これらは、解凍したとき元の状態に戻りやすく、風味が損なわれにくい野菜です。冷凍した状態の商品も、よく販売されていますね。
野菜を冷凍保存するときのコツ
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野菜を冷凍保存する場合は、以下のコツをおさえると、美味しさを保つことができます。
1.湯通ししてから冷凍する
野菜の品質の劣化には、野菜にもともと含まれる酵素も関わっています。この酵素は高温で失活するため、冷凍前に野菜を加熱しておくと、品質の低下を防ぐことができます。
例えば、ブロッコリーやほうれん草なら、沸騰したお湯でサッと下茹でし、水気をよく切ってから密閉保存して冷凍しましょう。トウモロコシや枝豆も、茹でてから冷凍するのがおすすめです。
※きのこ類やもやしは、湯通しなしでOKです。きのこは石づきを落として汚れをとり、ほぐして冷凍しましょう。もやしは洗ってから水気を切り、冷凍するのがおすすめ。
2.密閉する
乾燥や酸化を防ぐため、野菜はしっかり密閉してから保存するのもポイントです。ジップロックのような密閉袋に入れ、空気をしっかり抜いてから冷凍庫へ入れましょう。
3.解凍せずにそのまま調理する
野菜を自然解凍したり、レンジで解凍したりすると、水分が抜けて美味しくなくなってしまいます。また、常温でゆっくり解凍すると、温度の上がった部分からじわじわと微生物が増殖します。
冷凍された状態のまま、解凍せずにそのまま調理に使いましょう。
野菜を冷凍保存すると、組織が破壊されて軟らかくなるのもポイント。高齢者や子ども用の料理に使うときは、あえて野菜を冷凍してから使うこともあります。スープや煮物に冷凍野菜を使うと、煮込み時間を短縮できます。
まとめ
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野菜は、基本的には野菜室で保存することで鮮度が保てますが、低温に弱い野菜は常温での保存が適しています。低温障害を起こしやすい野菜をおさえておき、それ以外は冷蔵庫でOK、と考えると覚えやすいですね。
野菜を保存する際は、酸化や乾燥を防ぐためにしっかり密閉することもポイント。美味しさを保ち、栄養素の損失を防ぐこともできます。
野菜それぞれに適した方法で保存し、野菜本来の美味しさや栄養成分を丸ごといただきましょう。
Written by Yukari
低温障害が起こりやすいのは、夏野菜や熱帯・亜熱帯地方で収穫される野菜・果物が中心です。反対に、北海道などの寒冷地で栽培が盛んなじゃがいもは、低温への耐性が比較的強く、低温障害も起こりにくいのが特徴。じゃがいもは、発芽すると有毒なソラニンを産生するため、保存時は発芽を抑制することが最重要ポイントです。じゃがいもは常温保存するイメージもありますが、発芽を抑制するために冷蔵庫での低温保存をおすすめします。
参考文献
*1 邨田 卓夫「青果物の低温流通と低温障害」
*2 中川弘毅「貯蔵温度がじゃがいも塊茎の萌芽,呼吸量糖含量及びポリフェノールオキシダーゼ活性に及ぼす影響」
*3 (公社)フードスペシャリスト協会編『食物学Ⅱ』
*4(公社)フードスペシャリスト協会編『食品の官能評価・識別演習』
*5 茶珎 和雄「ピーマン果実の生理~貯蔵およびその栄養~」