古くから、柿は体を冷やす果物として知られ、特に体が冷えやすい女性は「柿を食べすぎないように」と言われてきました。しかし、柿が体を冷やすという言い伝えは本当なのでしょうか?この記事では、柿が体を冷やすといわれる理由とともに、体を冷やさない食べ方、1日あたりの適量を紹介します。
柿を食べると体が冷えるのは本当?
東洋医学(漢方)では、食べ物には体を冷やす性質のものと温める性質のものがあるとされ、寒・涼・平・温・熱の5つのタイプに食べ物を分類しています。
そのなかで、柿は寒性、つまり体を冷やす食べ物に分類されています。
これは、実際の食経験にもとづいて分類されたもの。科学的根拠は少ないものの、柿に関してはある研究で実際に柿を食べたあとで体表温度が低下したことが報告されています(*1)。
つまり、「柿は体を冷やす」は迷信ではなく、事実だったことが証明されました。
柿を食べると体が冷えるのはなぜ?
しかし、なぜ柿を食べると体が冷えるのでしょうか。その理由は、おもに以下の2つが考えられます。
①利尿作用があるため
柿には、利尿作用をもつカリウムが豊富に含まれています。そのため、柿を食べるとトイレに行く回数が増え、尿と一緒に体の熱も放出されるため、結果として体が冷えると考えられています。
②貧血を招く可能性があるため
柿には、渋味のもとであるタンニンも豊富に含まれています。このタンニンは、鉄と結合し、鉄の吸収を妨げる作用があります。
鉄の摂取量が減って貧血を招くと、血行が悪くなって、体が冷える可能性があります。
体を冷やすだけじゃない!柿を食べるメリット
「柿を食べると体が冷える」ことは本当のようですが、だからといって柿を避ける必要はありません。
体を冷やす理由の1つであるカリウムは、高血圧の予防にも役立つ成分。むしろ、積極的に摂取することが推奨されています。また、タンニンには抗酸化作用があり、がんや動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果的です。
そのほか、柿にはビタミンCやβ-カロテン、食物繊維なども豊富に含まれています。特にビタミンCは、美肌や健康のために役立つ栄養素ですが、甘柿1個で1日分のビタミンCを摂取することができます(*2)。
また、体に熱がこもりやすいタイプや、発熱時、夏の暑い日など、体の余分な熱をとったほうが良い場合もあります。そんなときは、体を冷やす柿が活躍してくれますよ。
体を冷やさない食べ方は?
前提として、柿は極端に食べすぎなければ健康上の問題はありません。また、1日くらい多く食べすぎてしまっても、心配しなくて大丈夫です。
ただ、もともと冷え性の方は、柿と一緒に体を温める作用のある食べ物をとると冷えを緩和することができますよ。
体を温める食べ物
・生姜
・シナモン
・くるみ
・栗
・桃
・さくらんぼ
・生姜
・紅茶
・ジャスミンティー
・ローズティー
漢方や薬膳の世界では、上記の食品に体を温める作用があるとされています。
特にシナモンは、「熱性」の食べ物。柿と味の相性も良いので、冷えが気になる方は一緒に食べてみてくださいね。おやつタイムに、柿と一緒に紅茶やジャスミンティーを飲むのもおすすめ。
柿の食べすぎってどれくらい?1日の適量は?
柿の適量は、1日に1~2個程度です。毎日柿を食べ続けたり、ほかの果物も食べたりする場合は、半分~1個に抑えるのがおすすめです。
柿に限らず、果物は1日に合計200g程度にすることが推奨されています(*3,4)。
適量(200g/日)の果物は、循環器疾患のリスクを下げるなどのメリットがありますが、果物には果糖が多く含まれているので、食べすぎると糖尿病や肥満を招く可能性も。どんな食べ物も適量が大切ですね。
ちなみに、干し柿は生の柿に比べて小さくなっていますが、ほぼ水分のみが抜けている状態なので、1個あたりの栄養価やカロリーは生のものとほぼ同じです。干し柿も1日あたり1~2個程度を目安にしましょう。
まとめ
「柿は体を冷やす」といわれるのは、利尿作用をもつカリウム、鉄の吸収を阻害するタンニンが柿に含まれることが主な理由。実際の研究でも、柿を食べたあとに体温が低下したことが確認されていることからも、「柿は体を冷やす」という噂は本当のようです。
しかし、柿はビタミン・ミネラル・食物繊維・ポリフェノールなどの抗酸化作用をもつ成分が豊富に含まれ、生活習慣病の予防に役立ちます。
柿に限らず、食べすぎが良くないのはどの食べ物も同じです。適量を心がけ、美味しく柿をいただきましょう!
Written by Yukari
旬の柿は栄養価も高く、上品な甘さやとろりとした食感が絶品ですよね。柿に体を冷やす性質があるなら、体を温める食べ物を一緒に食べれば大丈夫。ちなみに、緑茶やウーロン茶は体を冷やすといわれているので、柿と合わせるなら紅茶やジャスミンティーなどがおすすめです。
参考文献
*1 Hibino et.al「Regulation of the Peripheral Body Temperature by Foods: A Temperature Decrease Induced by the Japanese Persimmon (kaki, Diospyros kaki)」Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 67(1), 2003
*2 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」甘柿1個を150gとして計算
*3 厚生労働省「健康日本21(第三次)」
*4 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
*5 薬日本堂監修『薬膳・漢方の食材帳』
*6 神戸保「柿」