「健康やダイエットのためにミネラルをしっかり摂ろう」などとよく耳にしますよね。しかし、そもそもミネラルとはどのような栄養素なのでしょうか。この記事ではミネラルの種類や働き、欠乏したときの影響などを解説します。それぞれのミネラルを多く含む食品も併せて紹介するので、食生活に取り入れてみてくださいね。
ミネラルとは
ミネラルとは、糖質・タンパク質・脂質・ビタミンと並ぶ五大栄養素のひとつです。
ミネラルはエネルギー源にはなりませんが、糖質・タンパク質・脂質の代謝や、生体機能の調節などに関わります。また、骨や歯などの構成成分になるもの、筋肉の収縮や神経伝達などに関わるミネラルもあります。
ミネラルの種類
ミネラルといっても、種類はさまざま。現在、日本で必須栄養素とされているミネラルは13種類あります。
・ナトリウム
・カリウム
・カルシウム
・マグネシウム
・リン
・鉄
・亜鉛
・銅
・マンガン
・ヨウ素
・クロム
・セレン
・モリブデン
13種類のミネラルのうち、1日の必要量が100mg以上のものを「多量ミネラル」、100mg未満のものを「微量ミネラル」といいます。
ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リンの5種類が多量ミネラル、それ以外が微量ミネラルです。
ミネラルの働き
13種類のミネラルは、それぞれ体内での働きも異なります。
ミネラルの種類 | 主な働き |
---|---|
ナトリウム | ・体液量の調節 ・浸透圧の維持 ・神経伝達 |
カリウム | ・体液量の調節 ・浸透圧の維持 ・神経伝達 |
カルシウム | ・骨や歯の構成成分 ・筋肉の収縮 |
マグネシウム | ・骨や歯の構成成分 ・酵素の構成成分 ・神経や筋肉の機能維持 |
リン | ・骨や歯の形成 ・細胞膜の構成成分 |
鉄 | ・ヘモグロビンの構成成分 ・酸素の運搬 |
亜鉛 | ・酵素の構成成分 ・核酸の代謝 |
銅 | ・酵素の構成成分 ・鉄の代謝 |
ヨウ素 | ・甲状腺ホルモンの構成成分 |
マンガン | ・酵素の構成成分 ・抗酸化作用 |
クロム | ・血糖値の調節 |
セレン | ・酵素の構成成分 |
モリブデン | ・酵素の構成成分 |
ミネラルの働きは、大きく分けると2種類に分類できます。
①体の構成成分となる
②体の機能を調節する
体の構成成分になるのは、カルシウム・マグネシウム・リン・鉄など。カルシウム・マグネシウムは骨や歯、リンは細胞膜、鉄はヘモグロビンの構成成分となります。また、亜鉛・マンガン・モリブデンなどは、体内に存在する酵素の構成成分となり、代謝や抗酸化機能に重要な役割を果たします。
一方、ナトリウムとカリウムは細胞内外液の成分であり、互いにバランスをとって生体機能の調節にかかわります。カルシウムとマグネシウムも、神経の伝達や筋肉の収縮・弛緩などにかかわるミネラルです。
13種類のミネラルを詳しく解説
ここからは、それぞれのミネラルについて詳しくみていきましょう。摂取量の目安や、欠乏症・過剰症についても併せて紹介します。
1.ナトリウム
ナトリウムは食塩の主成分で、体内では細胞外液や血液に多く存在します。ナトリウムには、細胞内液と外液のバランスを取ったり、血液の量を調節したりする働きがあります。
ナトリウムは生命を保つために不可欠なミネラルですが、過剰摂取は高血圧の原因に。塩味の強い料理やスナック菓子、インスタントフードなどの食べ過ぎに注意しましょう。
ナトリウム(食塩相当量)の摂取量の目安
1日の食塩摂取量は、成人男性は7.5g未満、成人女性は6.5g未満に抑えることが目標です。しかし、日本高血圧学会では6g未満、世界保健機関(WHO)では5g未満と、より厳しい基準が推奨されています。
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
食事摂取基準 の目標量* | 7.5g未満 | 6.5g未満 |
日本高血圧学会 の推奨量 | 6.0g未満 | |
WHOの推奨量 | 5.0g未満 |
食塩相当量(g)=
ナトリウム(mg)×2.54÷1000
ナトリウムを多く含む食品
ナトリウムはさまざまな食品に含まれますが、インスタントフードや外食メニューに特に多く含まれます。
カップラーメン | ハンバーグ | 焼きそば | パスタ | 梅干し (1個) | 味噌汁 | 塩鮭 | 牛丼 | カレーライス | 生姜焼き定食 |
5〜6g | 2~4g | 4~6g | 3.5~7g | 約2g | 2~3g | 約2g | 2~3g | 3.5~5g | 5~7g |
ラーメンを汁まで飲み干すと、それだけで1日分の食塩を摂取してしまう場合も。ヘルシーなイメージのある和食も、味噌汁・焼き魚・梅干しなどを合わせると、あっという間に1日分の摂取目標量をオーバーしてしまうので、なるべく薄味を心がけましょう。減塩調味料を使うのもおすすめです。
2.カリウム
カリウムは細胞内液に多く存在し、ナトリウムとともに体液量の調節に働くほか、筋肉の収縮・神経の伝達などに関わる重要なミネラルです。
また、体内のナトリウムを排出する作用があるため、高血圧などの生活習慣病の予防に役立ちます。
カリウムの摂取量の目安
食塩摂取量の多い日本人は、高血圧の発症リスクも高くなります。意識的にカリウムを多く摂り、高血圧を予防しましょう。
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
目安量* | 2500mg以上 | 2000mg以上 |
目標量* | 3000mg以上 | 2600mg以上 |
カリウムを多く含む食品
カリウムは、野菜や果物、海藻類などに多く含まれています。食塩の摂取量が多い方は、これらの食品を積極的に食べましょう。
ほうれんそう | アボカド | にら | サニーレタス | にんじん | バナナ | メロン | キウイフルーツ | ぶどう | ぶなしめじ | エリンギ |
690mg | 590mg | 510mg | 410mg | 600mg | 360mg | 350mg | 300mg | 220mg | 370mg | 340mg |
3.カルシウム
体内のカルシウムの約99%は骨や歯の構成成分となり、残りの1%は血液の中に存在します。
血中カルシウム濃度は常に一定範囲に保たれています。血中濃度が下がれば骨からカルシウムが流出し、血中濃度が正常値まで上がります。反対に、血中カルシウム濃度が上がれば骨にカルシウムが沈着し、血中濃度を下げる仕組みです。
つまり、カルシウムの摂取量が長期的に不足すると、血中カルシウム濃度を保つために骨から多量のカルシウムが溶け出して骨が脆くなります。骨粗鬆症の予防のため、カルシウムは日常的にしっかり摂りましょう。
カルシウムの摂取量の目安
日本人の多くは、カルシウムの摂取量が足りていません。特に女性は閉経後、ホルモンバランスの変化にともなって骨粗鬆症のリスクが高まるので、若いうちからカルシウムを積極的に摂取しましょう。
男性 女性 18~29歳 30~74歳 75歳以上 18~29歳 30~74歳 75歳以上 推定平均必要量* 650mg 600mg 600mg 550mg 550mg 500mg 推奨量* 800mg 750mg 700mg 650mg 650mg 600mg 耐容上限量* 2500mg
カルシウムを多く含む食品
カルシウムは乳製品のほか、小魚や野菜、大豆製品などに多く含まれています。乳製品はカルシウムの吸収率も高いので、牛乳やチーズはカルシウム補給にぴったりです。
牛乳 (100g) | プレーン ヨーグルト (100g) | チェダー チーズ (50g) | ゴーダ チーズ (50g) | カマンベール チーズ (50g) | モッツァレラ チーズ (50g) | クリーム チーズ (50g) | ワカサギ (100g) | 煮干し (カタクチイワシ10g) | いりごま (10g) | シジミ (殻付き 10個程度) |
110mg | 120mg | 370mg | 340mg | 230mg | 165mg | 35mg | 225mg | 220mg | 120mg | 120mg |
4.マグネシウム
マグネシウムは、体内では骨や歯の構成成分となるほか、筋肉や細胞外液にも含まれます。
マグネシウムは体温や血圧の調節、神経の伝達、筋肉の収縮などに関わるミネラルです。また、栄養素の代謝に関わる酵素のサポートをするため、糖質や脂質の代謝、たんぱく質の合成などに関わります。
マグネシウムを日常的にしっかり摂取していると、心疾患や糖尿病、骨粗鬆症などの生活習慣病の予防に役立ちます。
マグネシウムの摂取量の目安
マグネシウムの摂取量が長期的に不足すると、心疾患や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めるといわれています。また、マグネシウムが欠乏すると「低マグネシウム血症」を引き起こし、吐き気や眠気、脱力感などの症状が現れます。
一方、マグネシウムを過剰摂取すると下痢を引き起こすことがあるため、サプリなどから摂取する量は350mg未満に抑えましょう。
男性 | 女性 | |||||||||
18~29歳 | 30~64歳 | 65~74歳 | 75歳以上 | 18~29歳 | 30~64歳 | 65~74歳 | 75歳以上 | |||
推定平均必要量 | 280mg | 310mg | 290mg | 270mg | 230mg | 240mg | 230mg | 220mg | ||
推奨量 | 340mg | 370mg | 350mg | 320mg | 270mg | 290mg | 280mg | 260mg | ||
耐容上限量 | サプリなどからの摂取は350mg未満に |
マグネシウムを多く含む食品
素干し あおさ (10g) | 素干し あおのり (10g) | ゆで枝豆 (100g) | 木綿豆腐 (100g) | 納豆 (1パック) | アーモンド (10粒) | ほうれん草 (100g) | ごぼう (100g) | オクラ (100g) |
320mg | 140mg | 72mg | 57mg | 40mg | 31mg | 69mg | 54mg | 51mg |
\マグネシウムが豊富な海洋深層水についての記事はこちら/
5.リン
リンは、カルシウムとともに骨や歯を構成する成分です。リンとカルシウムは結合してリン酸カルシウムとなり、「ヒドロキシアパタイト」と呼ばれる強固な結晶を作ります。
また、リンは細胞膜や核酸の成分となるほか、エネルギー代謝にも必要なミネラルです。
リンの摂取量の目安
リンが不足すると骨や歯が脆弱化しますが、リンをカルシウムより多く摂取するとカルシウムの吸収が阻害されてしまいます。
つまり、リンは多すぎても少なすぎても骨や歯を脆くするため、摂取量のバランスが重要です。1日あたりの摂取量は女性は800mg、男性は1,000mgを目安にし、耐容上限量である3,000mgを超えないように注意しましょう。
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
目安量* | 1000mg | 800mg |
耐容上限量* | 3000mg | 3000mg |
リンを多く含む食品
リンは肉や魚介類、玄米、卵などに多く含まれています。
鶏ささみ | 鶏むね肉 | 鶏もも肉 | ウインナー | 豚肩ロース | 牛リブロース | クルマエビ | スルメイカ | タラバガニ | 玄米ごはん (150g) | 煮干し (カタクチイワシ 10g) | 卵 (1個) |
240mg | 200mg | 190mg | 200mg | 180mg | 170mg | 310mg | 250mg | 220mg | 195mg | 150mg | 102mg |
6.鉄
鉄は赤血球のヘモグロビンの構成成分となり、全身へ酸素を供給します。鉄が不足すると、鉄欠乏性貧血を招くことはご存知の通りです。
野菜や海藻に多く含まれる非ヘム鉄は吸収率が低く、肉や魚介類に含まれるヘム鉄は非ヘム鉄より吸収率が高いのが特徴です。
非ヘム鉄は、ビタミンCやクエン酸などと一緒に摂取すると吸収率が上がるので、食材の組み合わせを工夫しましょう。
鉄の摂取量の目安
鉄の摂取量は、年代や性別によって異なります。特に月経のある女性は毎月鉄が失われるため、鉄をしっかり補いましょう。
男性 | 女性 | ||||||||
18~64歳 | 65~74歳 | 75歳以上 | 18~29歳 | 30~49歳 | 49~64歳 | 65~74歳 | 75歳以上 | ||
推定平均必要量* | 6.5mg | 6.0mg | 6.0mg | 月経なし | 5.5mg | 5.5mg | 5.5mg | 5.0mg | 5.0mg |
月経あり | 8.5mg | 9.0mg | 9.0mg | - | - | ||||
推奨量* | 7.5mg | 7.5mg | 7.0mg | 月経なし | 6.5mg | 6.5mg | 6.5mg | 6.0mg | 6.0mg |
月経あり | 10.5mg | 10.5mg | 11.0mg | - | - | ||||
耐容上限量* | 50mg | 40mg |
鉄を多く含む食品
鉄を多く含む食品といえば、レバーが有名ですね。レバーだけでなく、肉類や貝類にも鉄が豊富に含まれています。
鶏レバー | 豚レバー | 牛ヒレ肉 | 牛ランプ | シジミ | アサリ | ホタテ | ハマグリ | 玄米 (150g) | 卵 (1個) |
9mg | 13mg | 2.8mg | 1.3mg | 8.3mg | 3.8mg | 2.2mg | 2.1mg | 0.9mg | 0.8mg |
7.亜鉛
亜鉛は、体内の300種類以上もの酵素の構成成分になります。
DNAの複製やRNAの合成に必要な酵素の構成成分であり、細胞分裂に関わります。味覚細胞や皮膚細胞のように新陳代謝が活発な部分では、亜鉛の欠乏によって障害が生じます。代表的な亜鉛欠乏の症状が、味覚障害や皮膚炎です。
また、亜鉛は抗酸化作用を持つSODという酵素の構成成分にもなります。SODは、体内で発生した活性酸素を除去し、細胞を酸化ストレスから守ってくれます。
亜鉛の摂取量の目安
男性 | 女性 | |||||
18~29歳 | 30~64歳 | 65~74歳 | 75歳以上 | 18~74歳 | 75歳以上 | |
推定平均必要量* | 9mg | 7mg | 6mg | |||
推奨量* | 11mg | 10mg | 8mg | |||
耐容上限量* | 40mg | 45mg | 40mg | 40mg | 35mg | 30mg |
亜鉛を多く含む食品
牡蠣 | 豚レバー | 鶏レバー | 牛肩ロース肉 | 豚肩ロース肉 | 鶏もも肉 | マダコ | ホタテ | スルメイカ | 玄米ごはん (150g) | 白ごはん (150g) | ライ麦パン(4枚切1枚) | 食パン (4枚切1枚) |
14.0mg | 6.9mg | 3.3mg | 5.8mg | 2.7mg | 1.6mg | 3.1mg | 2.7mg | 1.5mg | 0.8mg | 0.6mg | 1.3mg | 0.5mg |
8.銅
銅は、鉄との関わりが深いミネラルです。
鉄は体内では肝臓にストックされていますが、赤血球を作る際は骨髄へ運ばれる必要があります。この際に、鉄輸送たんぱく質と結合できるよう、鉄の形を変えるのが銅の役割です。
そのほか、銅はSODをはじめとする酵素の構成成分となり、抗酸化・白血球の成熟・骨の強度維持などに働きます。
銅の摂取量の目安
男性 | 女性 | ||
18~74歳 | 75歳以上 | 18歳以上 | |
推定平均必要量* | 0.7mg | 0.6mg | |
推奨量* | 0.9mg | 0.8mg | 0.7mg |
耐容上限量* | 7mg |
銅は、欠乏だけでなく過剰摂取にも注意が必要な栄養素です。特にサプリメントを利用すると、推奨量をはるかに超える量の銅を摂取してしまう恐れがあります。
食品に含まれる銅の量
銅は肝臓に多く存在するため、動物のレバーや魚の肝に多く含まれます。これらの食品とともに、銅のサプリメントを飲用するのは控えましょう。
牛レバー | ホタルイカ | うなぎの肝 | 牡蠣 | あん肝 | 玄米ごはん (150g) | 白ごはん (150g) | 食パン (4枚切1枚) |
5.30mg | 3.42mg | 1.08mg | 1.04mg | 1.00mg | 0.18mg | 0.15mg | 0.09mg |
9.マンガン
マンガンは、亜鉛や銅と同じく抗酸化作用を持つ「SOD」の構成成分です。
銅や亜鉛を含むSODは細胞質に存在しますが、マンガンを含むSODはミトコンドリアに存在し、栄養素の代謝にともなって産生される活性酸素を除去します。
この活性酸素が除去しきれないと、ミトコンドリアDNAが傷害されて老化を引き起こすため、マンガンの摂取が重要となります。
マンガンの摂取量の目安
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
目安量* | 4.0mg | 3.5mg |
耐容上限量* | 11mg |
マンガンを多く含む食品
マンガンは、玄米や野菜、ナッツ類、お茶などに多く含まれています。緑茶や紅茶には、抗酸化作用のあるポリフェノールも多く含まれるので、エイジングケアに効果的です。
シジミの水煮 (100g) | アサリの水煮 (100g) | 玉露 (1杯) | 冷凍アサイー (100g) | 水前寺菜 (100g) | 玄米ごはん (150g) | くるみ (10g) | アーモンド (10g) |
7.30mg | 1.24mg | 4.60mg | 5.91mg | 2.11mg | 1.04mg | 0.34mg | 0.25mg |
10.ヨウ素
ヨウ素は、海藻や魚介類に多く含まれるミネラルで、甲状腺ホルモンの成分になります。
甲状腺ホルモンは、熱産生や心拍数などを増加させる作用があり、基礎代謝を高めます。また、タンパク質の合成、脂質の合成・分解を促進する働きもあります。
ヨウ素の摂取量の目安
ヨウ素が欠乏すると、甲状腺ホルモンがうまく分泌されなくなり、甲状腺腫(首元の腫れ)や甲状腺機能低下症を招き、倦怠感や体重増加などの症状が起こります。
反対に、ヨウ素を過剰に摂取した場合も甲状腺機能低下症を招く可能性があるため、適量の摂取を心がけましょう。
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
推定平均必要量* | 95μg | |
推奨量* | 130μg | |
耐容上限量* | 3000μg |
ヨウ素を多く含む食品
ヨウ素は主に海藻類に多く含まれています。昆布のだし汁には多くのヨウ素が含まれ、毎食とると過剰摂取につながることも。煮干しや鰹のだし汁を併用したり、汁物は1日2食までにしたりして工夫しましょう。
昆布の佃煮 (10g) | 昆布のだし汁 (100g) | しめさば (100g) | マダラ (100g) | ところてん (100g) | 乾燥わかめ (2g) | お茶漬けの素 (1杯分) | キムチの素 (10g) | サザエ (1個) | 沖縄もずく (50g) | 焼き海苔 (1枚) |
1100μg | 1100μg | 430μg | 350μg | 240μg | 200μg | 約200μg | 190μg | 97μg | 70μg | 63μg |
11.クロム
クロムには、糖や脂質の正常な代謝をサポートする働きがあります。
特に血糖値の維持に重要なミネラルで、クロモデュリンという成分とクロムが結合するとインスリン作用を増強させ、耐糖能を正常に保ちます。
食後、血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌され、糖を細胞内に取り込むことで血糖値が正常値まで戻ります。このように、上がった血糖値を元の状態に戻す能力を「耐糖能」といいます。
インスリンは細胞内への糖の取り込みを促進するホルモン。インスリンの作用が充分に効かなくなると、血糖値が下がりにくくなり、糖尿病を招きやすくなります。
クロムは、インスリンから細胞内への刺激伝達を促進し、耐糖能を改善するといわれています。
クロムの摂取量の目安
近年では、「クロムは必須栄養素ではない」とする説も有力です。そのため、摂取量が目安量を満たさなくても、サプリメントなどで積極的に補う必要はないとされています。
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
目安量* | 10μg | |
耐容上限量* | 500μg |
クロムを多く含む食品
クロムは、魚介類や肉類に多く含まれています。
冷凍アサイー (100g) | 素干し あおさ (10g) | かき (100g) | あわび (100g) | 豚レバー (100g) | 牛かたロース (100g) | ホットケーキ ミックス (100g) | 梅干し (中1個) |
60μg | 16μg | 14μg | 6μg | 6.9μg | 6.4μg | 5μg | 4μg |
12.セレン
セレンは、抗酸化作用を持つGPXという酵素の構成成分となり、過酸化脂質や過酸化水素を除去します。また、甲状腺ホルモンの合成に必要な酵素の構成成分にもなります。
かつて、中国の克山という地方でセレン欠乏による心筋障害などが見られました。この地域の土壌にはセレンが少なく、食糧を自給自足していたことからセレン欠乏が起きたようです。
セレンの摂取量の目安
通常の食生活でセレンの欠乏・過剰が起こる可能性は低いといわれていますが、サプリメントの不適切な使用で過剰摂取する恐れはあります。耐容上限量を超えないように注意しましょう。
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
推定平均必要量* | 25μg | 20μg |
推奨量* | 30μg | 25μg |
耐容上限量* | 450μg (75歳以上は400μg) | 350μg |
食品に含まれるセレンの量
セレンは、主に魚介類に豊富に含まれています。日本人は魚介類の摂取量が多く、セレン含有量の高い北米産の小麦を多く消費することから、セレンが欠乏する可能性は低いといわれています。
あん肝 (100g) | クロマグロ (100g) | マガレイ (100g) | ズワイガニ (100g) | たらこ (1腹) | シメサバ (100g) | 豚レバー (100g) | 鶏レバー (100g) | あじの開き (1枚) | かつお節 (10g) |
200μg | 110μg | 110μg | 100μg | 100μg | 73μg | 67μg | 60μg | 50μg | 32μg |
13.モリブデン
モリブデンは、プリン体を尿酸へ分解する過程で働く酵素のサポートをします。
モリブデンは多く摂取しても尿中に排出されるため、過剰症の心配はほぼありません。しかし、極端な菜食主義者の場合はモリブデンの摂取量が多くなり、銅の吸収が阻害される恐れがあります。
モリブデンの摂取量の目安
男性 | 女性 | ||||
18~29歳 | 30~64歳 | 65~74歳 | 75歳以上 | 18歳以上 | |
推定平均必要量* | 20μg | 25μg | 20μg | 20μg | 20μg |
推奨量* | <30μg | 30μg | 30μg | 25μg | 25μg |
耐容上限量* | 600μg | 500μg |
モリブデンを多く含む食品
モリブデンは穀類や豆類に多く含まれています。ご飯や大豆製品を中心とした「日本型の食事」では、モリブデンが欠乏することはほぼありません。
枝豆(100g) | そら豆 (100g) | 納豆 (1パック) | 絹ごし豆腐 (100g) | オートミール (100g) | 豚レバー (100g) | 牛レバー (100g) | 玄米ごはん (150g) |
240μg | 150μg | 145μg | 69μg | 110μg | 120μg | 94μg | 51μg |
ミネラルは必要不可欠な栄養素
ミネラルは五大栄養素のひとつで、糖質・脂質・タンパク質の代謝をサポートするほか、体の構成成分として働きます。
ひとつひとつのミネラルの働きは異なるので、どのミネラルが欠けても体の機能に不調が生じてしまいます。偏った食事をせず、さまざまな食品をバランスよく食べると、種々のミネラルを摂取することができますよ。
日本人は特にカルシウムの摂取量が不足、ナトリウム(食塩)の摂取量が過剰傾向にあります(*2)。ミネラルの働きとともに、どの食品にどのミネラルが含まれているのかをざっくり理解しておくと、食生活の改善に役立ちます。
今回の記事が、皆さまの健康をサポートできることを祈っています。
*食事摂取基準の用語について
推定平均必要量:ある集団において50%の人が必要量を満たすと考えられる1日の摂取量
推奨量:ある集団においてほとんどの人が必要量を満たすと考えられる1日の摂取量
目安量:ある一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量
目標量:生活習慣病の発症予防のために目標とする摂取量
耐容上限量:健康被害がないと考えられる習慣的な摂取量
参考文献
*1 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
*2厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」
・五明紀春ら『基礎栄養学 第2版』朝倉書店,2020
・田地陽一『基礎栄養学 第4版』羊土社,2020
・日本人の食事摂取基準(2020年版)
・MSDマニュアル家庭版