大豆はたんぱく質やミネラルなどを豊富に含む栄養価の高い食品。日本人は昔から、大豆を加工してさまざまな食品や調味料を作ってきました。この記事では、大豆の加工食品を一覧でご紹介。さらに、それぞれの特徴や栄養価を詳しく解説します。
大豆からできるものは何がある?大豆の加工食品一覧!
まずは、大豆から作られる食品・調味料などを一覧で紹介します。カロリーや栄養価もそれぞれ異なるので、チェックしてみてくださいね。
カロリー(kcal) | 水分(g) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 糖質(g) | 食物繊維(g) | |
豆乳 | 44 | 90.8 | 3.6 | 2.0 | 2.9 | 0.2 |
おから (生) | 88 | 75.5 | 6.1 | 3.6 | 12.3 | 11.5 |
木綿豆腐 | 73 | 85.9 | 7.0 | 4.9 | 0.4 | 1.1 |
絹ごし豆腐 | 56 | 88.5 | 5.3 | 3.5 | 1.1 | 0.9 |
油揚げ | 377 | 39.9 | 23.4 | 34.4 | ー | 1.3 |
生揚げ (厚揚げ) | 143 | 75.9 | 10.7 | 11.3 | 0.2 | 0.7 |
がんもどき | 223 | 63.5 | 15.2 | 16.8 | 2.0 | 1.4 |
凍り豆腐 (高野豆腐) | 496 | 7.2 | 49.7 | 32.3 | 0.2 | 2.5 |
生湯葉 | 218 | 59.1 | 21.8 | 13.7 | 3.3 | 0.8 |
干し湯葉 | 485 | 6.9 | 50.4 | 32.1 | 4.2 | 3.0 |
糸引き納豆 | 190 | 59.5 | 16.5 | 10.0 | 5.4 | 6.7 |
寺納豆 | 248 | 24.4 | 18.6 | 8.1 | 23.9 | 7.6 |
味噌 | 206 | 42.6 | 8.7 | 3.0 | 33.3 | 5.6 |
醤油 | 76 | 67.1 | 6.1 | 0 | 8.6 | - |
大豆の加工品の特徴・栄養価
大豆は、どう加工するかによって栄養価や特徴が変わります。例えば、同じ豆腐でも絹ごしか木綿かで、100gあたりのカロリーやタンパク質などの含有量も異なります。
ここでは、それぞれの大豆加工食品の特徴や栄養価を詳しく紹介します。
1.豆乳
豆乳は、水に浸けた大豆をすり潰し、加熱して濾したものです。
ろ過することで固形分が除かれるため、豆乳には食物繊維はあまり含まれていません。しかし、たんぱく質や脂質は豆乳にも豊富に含まれるため、豊かなコクやうま味が感じられます。
ちなみに、豆乳に砂糖や食塩などを加えて飲みやすくしたものが調製豆乳、さらに果汁などを加えたものが豆乳飲料です。
豆乳の栄養価
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物繊維 |
44kcal | 90.8g | 3.6g | 2.0g | 2.9g | 0.2g |
豆乳は食物繊維の量は少ないものの、たんぱく質・脂質・炭水化物をバランスよく含んでいます。食事を摂る時間がないときや小腹が空いたときは、豆乳をコップ1杯飲むだけでも違いますね。
大豆イソフラボンも豆乳に含まれていますが、商品によって含有量は異なるため、パッケージなどを確認してみてくださいね。
2.おから
おからは、大豆から豆乳を作るときに出る搾りかすです。
豆乳とは反対に、食物繊維を豊富に含むのが特徴。また、豆乳中に流出しなかったたんぱく質や脂質も含まれます。
おからは卯の花などに調理されるほか、おからパウダーに加工されることも。おからパウダーは、お菓子作りやハンバーグのつなぎとして活用されます。食物繊維が豊富で低カロリーなので、ダイエット中の方から人気の食品です。
おからの栄養価
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物繊維 |
88kcal | 75.5g | 6.1g | 3.6g | 12.3g | 11.5g |
豆乳には水溶性の成分が溶け出しますが、不溶性の成分は残ります。そのため、おからは豆乳に比べて不溶性食物繊維を多く含む特徴があります。ちなみに、必須アミノ酸組成は豆乳とおからに大きな差はありません。
3.豆腐
豆腐は、豆乳に凝固剤を加えて固めたもの。製法によって、絹ごし豆腐、木綿豆腐、ソフト豆腐などに分けられます。
木綿豆腐は製造工程の終盤で圧搾するため、水分量が減って硬めに仕上がります。
ちなみに、凝固剤としては“にがり”(塩化マグネシウム)などが使われます。豆乳ににがりを加えると、たんぱく質が凝固して豆腐になります。
木綿豆腐と絹ごし豆腐の栄養価
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物繊維 | |
木綿豆腐 | 73kcal | 85.9g | 7.0g | 4.9g | 0.4g | 1.1g |
絹ごし豆腐 | 56kcal | 88.5g | 5.3g | 3.5g | 1.1g | 0.9g |
木綿豆腐は、絹ごしどうふに比べてたんぱく質・脂質・食物繊維が多いのが特徴です。
ビタミンやミネラルも木綿豆腐の方が若干多めに含みますが、カリウムは絹ごし豆腐のほうが多く含んでいです。また、豆腐は豆乳から作られるため、食物繊維が少ないのも特徴です。
4.油揚げ
油揚げは、固めの豆腐を薄く切り2度揚げしたものです。最初は120℃前後で揚げ、2度目は200℃前後で揚げて表面にこんがりと焼き色を付けています。
油揚げの栄養価
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 食物繊維 | |
油揚げ | 377kcal | 39.9g | 23.4g | 34.4g | 1.3g |
油揚げ(油抜き) | 266kcal | 56.9g | 18.2g | 23.4g | 0.9g |
油揚げ(茹で) | 164kcal | 72.6g | 12.4g | 13.8g | 0.6g |
油で揚げるため、油揚げは豆腐より脂質を多く含むのが特徴。その分、カロリーも高くなります。
カロリーや脂質の摂取量を抑えるためには、しっかり油抜きすることがポイント。特に、下茹ですると100gあたり200kcalも減らすことができます。
油揚げは豆腐に比べて水分量が少ないため、保存性が高まるのも特徴ですね。ただし、脂質が酸化しやすいので、空気に触れないよう密封保存しましょう。
5.厚揚げ(生揚げ)
厚揚げは、木綿豆腐を厚めに切り、200℃前後の高温で揚げたものです。油揚げより豆腐らしい食感が残るのが特徴ですね。
厚揚げの栄養価
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物繊維 |
143kcal | 75.9g | 10.7g | 11.3g | 0.2g | 0.7g |
厚揚げも油揚げと同様に脂質を多く含みますが、水分量が多いため、100gあたりのカロリーは油揚げより低くなります。厚揚げも、油抜きや茹でこぼししてから使うと脂質の量やカロリーを減らすことができますよ。
6.湯葉
湯葉は、豆乳を加熱し、表面にできた皮膜をすくい取ったものです。
すくい取ったままの状態が生湯葉、乾燥させたものが干し湯葉、手で巻き取ったものが巻き湯葉と呼ばれます。
湯葉は精進料理や会席料理によく登場するほか、京都や日光の特産品としても知られています。
湯葉の栄養価
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物繊維 | |
生湯葉 | 218 kcal | 59.1g | 21.8g | 13.7g | 3.3g | 0.8g |
干し湯葉 | 485 kcal | 6.9g | 50.4g | 32.1g | 4.2g | 3.0g |
湯葉は、豆乳中のたんぱく質や脂質が集まってできたもの。そのため、たんぱく質や脂質が多く含まれるのが特徴です。豆腐に比べてカリウムが多いのも特徴ですね。
7.納豆
納豆は、納豆菌によって大豆を発酵させたもの。柔らかく煮た大豆に納豆菌をつけ、20時間程度かけて発酵させます。
納豆の特徴でもあるネバネバの成分は、ポリグルタミン酸というもの。これは、大豆のたんぱく質を納豆菌が分解することで生成されます。
納豆の栄養価
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物繊維 |
190kcal | 59.5g | 16.5g | 10.0g | 5.4g | 6.7g |
大豆をそのまま使用する納豆は、豆腐や豆乳に比べて食物繊維の量が多いのが特徴です。納豆1パックは40~50gなので、1パックで約3gの食物繊維を摂ることができます。
また、納豆は大豆製品の中でずば抜けてビタミンKを多く含みます。ビタミンKはカルシウムの吸収や骨への沈着を助けるので、骨粗鬆症の予防に効果的です。
8.寺納豆
寺納豆とは、納豆菌ではなく麹カビを使って発酵させたもの。普通の糸引き納豆より長い時間をかけて発酵・熟成させ、天日干しなどをして乾燥させます。
ネバネバした食感はなく、中華料理に使う豆豉(トウチ)のような味が特徴です。そのまま食べると塩味が強いので、料理に使ったり、細かく刻んでご飯にかけたりするのがおすすめ。
ちなみに、寺納豆は京都の大徳寺納豆や一休寺納豆、浜松市の浜納豆が有名です。
カロリー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物繊維 |
248kcal | 24.4g | 18.6g | 8.1g | 23.9g | 7.6g |
寺納豆は食塩水に漬け込んで熟成させるため、ナトリウムを多く含みます(5600mg/100g)。乾燥させて作るため、水分量が少なく保存がきくのも特徴です。
【おまけ】大豆もやし
大豆の加工品ではありませんが、大豆もやしも大豆からつくられているので最後に紹介しますね。
大豆もやしは、お湯に浸した大豆を発芽させたものです。もやしの先に黄色の豆が付いているのが特徴。ナムルやサラダなどに使うと、食感が生かされて美味しく食べられます。
大豆もやしの栄養価
カロ リー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 糖質 | 食物 繊維 | |
大豆 もやし | 29kcal | 92.0g | 3.7g | 1.5g | ー | 2.3g |
緑豆 もやし | 15kcal | 95.4g | 1.7g | ー | 1.3g | 1.3g |
ブラックマッペ | 17kcal | 94.7g | 2.2g | 0.1g | 1.3g | 1.5g |
緑豆もやしやブラックマッペに比べて、大豆もやしは栄養価が高いのが特徴です。特に、たんぱく質や食物繊維が多く含まれています。
また、生の大豆に比べて大豆もやしはビタミンCが多くなるのも特徴です。ビタミンCの損失を防ぐためには、加熱時間を短くしたり、レンジで調理したりするのがおすすめです。
なぜこんなに種類があるの?大豆の加工食品が多い理由
なぜ、日本にはこんなに大豆の加工食品・調味料が多いのでしょうか。その理由は、日本の文化や歴史にも関わりがあります。
1.肉食禁止だったから
日本では、仏教の思想により、飛鳥時代に「肉食禁止令」が出されました。キリスト教が伝来してからは徐々に肉食の禁忌が解かれるようになりましたが、一般的に肉食が広まったのは明治時代になってからです。
その間、日本人の貴重なたんぱく源として大豆が重宝されてきました。
また、大豆を発酵させることでうま味が増すため、精進料理のようにコクやうま味の少ない食事も、味噌や醤油を添えることで美味しく食べられるようになったのです。
2.生大豆は消化性が悪いから
生の大豆はそのままだと消化性が悪いことも、大豆を加工する理由のひとつ。
生の大豆は非常に硬く、そもそも噛むことも困難です。そのため、柔らかく煮たり、細かく砕いてきな粉にしたりすることで、食べやすく、消化しやすい形状にしています。
豆腐や豆乳なら、高齢者や子どもでも消化器に負担をかけずに食べることができますね。
3.たんぱく質が豊富だから
豆といえば、大豆だけでなく小豆やえんどう豆などもあります。その中から大豆の加工食品だけ非常に多いのは、大豆が他の豆類よりたんぱく質を豊富に含むという特徴を持っているためです。
たんぱく質には、酸や塩類と反応して凝固する性質や、冷凍や加熱で変性する性質があります。これらの性質を利用し、豆腐や高野豆腐、湯葉などのさまざまな食品が作られています。
また、味噌や醤油などの発酵食品は、発酵・熟成中に大豆のたんぱく質が分解されて、うま味のもとであるアミノ酸などが生まれます。さらに、アミノ酸が糖と反応することで、特有の色や香りも生まれるのです。
まとめ
今回は、大豆の加工食品・調味料とその栄養価を紹介しました。あらためて見ると、日本人の食卓には大豆からつくられるものが非常に多いことが分かりますね。
加工の方法によって栄養価や保存性などが異なるため、それぞれの性質を理解して調理や食生活に生かしましょう。
日本の歴史や文化とともに発展してきた大豆の加工技術。
Written by Yukari
もしも大豆がなかったら、日本人はとっくに滅んでいたのでは、と思うことがあります。少なくとも、味噌や醤油のない食事はかなり味気ないものになっていたことでしょう。日本の歴史や文化とともに発展してきた大豆の加工技術。最近は、味噌や醤油などの伝統的な調味料の消費量が減ってきています。日本の大切な食文化を絶やさないためにも、もう一度、その良さを見直したいですね。
参考文献
・菅原龍幸監修『新版 食品学Ⅱ』, 建白社, 2018
・日本食品標準成分表2020年版(八訂)