発芽玄米は、玄米をわずかに発芽させることで栄養価や消化性を高めた食品です。そんな発芽玄米には、高血圧の予防・改善に効果的な成分も含まれています。今回は、発芽玄米に含まれる成分とともに、血圧を下げる仕組みについて紹介します。
発芽玄米には「GABA」が含まれる
発芽玄米には、各種のミネラル・ビタミンB群・食物繊維・フェルラ酸・GABAなどが含まれています。
中でも、GABAはさまざまな機能性を持ち、血圧を下げる効果も確認されている成分です(*1)。
また、発芽玄米にはミネラルの一種であるマグネシウムも豊富に含まれていますが、マグネシウムを日常的にしっかり摂取していると、虚血性心疾患の発症リスクが下がるといわれています。
GABAが血圧を下げる仕組み
発芽玄米に含まれるGABAは、なぜ血圧を下げるのでしょうか。
GABAはアミノ酸の一種で、体内では「抑制系」の物質として働きます。興奮性の物質であるアドレナリンやノルアドレナリンとは反対の性質ですね。
このような興奮性の物質が過剰分泌されたり、交感神経の活動が亢進したりすると、血管の収縮や心拍数の増加が起こり、血圧が上昇します。
GABAは、興奮性物質の過剰分泌を抑えるとともに、交感神経の活動を抑制するため、血管収縮や心拍数増加を防ぎ、結果として血圧が降下します。
なお、GABAの血圧降下作用は、血圧が標準より高い場合のみに起こり、正常血圧の場合は維持されます。発芽玄米を食べて必要以上に血圧が下がることはないので、安心してくださいね。
GABAは普通の玄米より発芽玄米に多い
GABAは、白米より玄米、そして玄米より発芽玄米に多く含まれています。
それは、玄米が発芽する過程でGABAの量が増えるため。
そもそも発芽玄米が注目されるようになったのは、玄米を水に浸すと、発芽にともなってGABAの量が急激に増えると発見されたことがきっかけでした(*2)。
商品によりますが、一般的に発芽玄米には普通の玄米の3倍以上のGABAが含まれるといわれています。
白米 | 玄米 | 発芽玄米 |
1mg | 3mg | 10〜40mg |
高血圧を放置するとどうなる?高血圧対策が大切な理由
高血圧は、
・動脈硬化
・心血管疾患
・脳卒中
など、さまざまな生活習慣病を引き起こす原因となります。
血圧が高い状態が続くと血管に負荷がかかり、しだいに血管壁が厚く硬くなり、動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化によって血栓ができたり、血流が悪くなったりすると、心血管疾患や脳卒中のリスクが上がります。また、高血圧は心臓に直接的な負荷をかけるため、心肥大なども起こりやすくなります。
高血圧を放置していて良いことは1つもありません。日頃の食事や運動によって高血圧を予防・改善し、生活習慣病の発症を防ぎましょう。
なお、高血圧の基準は、拡張期血圧140mmHg、収縮期血圧90mmHgです。詳しい分類は、下の表に記しました。
拡張期 (mmHg) | 収縮期 (mmHg) | |
正常血圧 | 120以下 かつ 80以下 | |
正常高値血圧 | 120〜129 かつ 80以下 | |
高値血圧 | 130〜139 かつ、または 80〜89 | |
高血圧Ⅰ | 140〜159 かつ、または 90〜99 | |
高血圧Ⅱ | 160〜179 かつ、または 100〜109 | |
高血圧Ⅲ | 180以上 かつ、または 110以上 |
高血圧改善だけじゃない!発芽玄米の効果
発芽玄米には、高血圧の予防・改善だけでなく、下記のようにさまざまな効果が期待できます。
・血中コレステロールの低下
・ストレスの緩和
・血糖値の安定
・便秘の改善
GABAは、高血圧に対する作用と同じように、ドーパミンやアドレナリンなどの興奮系の物質の過剰分泌を抑制することで精神を落ち着かせ、リラックスした状態に導きます。
また、発芽玄米に豊富に含まれる食物繊維は、血糖値の安定、便秘の改善、腸内のコレステロール排出に役立ちます。
発芽玄米の機能性については、下の記事で詳しく説明しているので、ご興味のある方は読んでみてくださいね。
発芽玄米を食べて高血圧対策しよう!
発芽玄米には、血圧降下作用のあるGABAが豊富に含まれているため、発芽玄米を日常的に摂取すると、高血圧の予防・改善に役立ちます。
血圧を下げるためには、食塩の摂取量を控えること、カリウムを積極的に摂取すること、適度な運動をすることも効果的です。
発芽玄米の摂取とあわせて、薄味を心がけ、カリウムの豊富な野菜や海藻を多く食べることが大切です。また、ウォーキングのような軽い運動を取り入れるなど、できることから始めましょう!
参考文献
*1 佐々木泰弘・河野元信
「ギャバ(GABA)の効能と有効摂取量に関する文献的考察」
*2 石渡健一「発芽玄米の機能性」
・厚生労働省「高血圧」
・日本高血圧学会HP
・森田英利・田辺創一「わかりやすい食品機能学第2版」