「今年のお米が美味しくない…」「新米なのになぜ?」そんな風に感じていませんか?じつは、お米も他の農作物と同じように猛暑の影響を受けて品質や味が低下してしまいます。この記事では、猛暑がお米に与える影響とともに、暑さに強い美味しいお米の品種を紹介します。
猛暑でお米がまずくなる?
近年、地球温暖化にともなう夏場の気温上昇により、全国的にお米の品質が低下しています(*1)。
お米は、見た目の美しさにより「一等米」から「四等米」の4段階で格付けされますが、ここ数年は一等米の割合が減少しています。米粒の大きさが揃わないだけでなく、お米が白く濁ったり、亀裂や黒い線が入ったりします。
猛暑の影響を受けたお米は、見た目とともに味わいも低下します。白濁したお米や亀裂・ヒビが入ったお米は水分を吸収しやすく、べちゃっとした炊き上がりに。また、高温の影響でお米のタンパク質含量は多くなりますが、タンパク質の多すぎるお米はパサつきやすく、美味しくないといわれています(*2)。
この先も地球温暖化が進むと、お米の品質は落ち、農家さんは収入が減ってしまい、私たち消費者は美味しいお米を食べられなくなってしまうかもしれません。お米は食料自給率の高い食品でもあるので、日本の農業の底力を維持するためにも、深刻に考えたい問題ですね。
猛暑の年でも美味しい!暑さに強いお米の品種
地球温暖化によるお米の品質低下が問題になってから、猛暑に強いお米の品種の開発もさかんに行われてきました。「今年のお米が美味しくない」と感じたら、暑さに強いお米の品種を選んでみましょう。
1.にこまる
にこまるは、気候変動に対応するために1996年から開発が始まり、2005年に誕生したお米です。まだ一般的な認知度は低いものの、お米の食味ランキングでは「特A」を何回も獲得しています。
にこまるは主に西日本で栽培されていますが、おすすめは静岡県産・高知県産・愛媛県産のものです。特に静岡県産のにこまるは、2018年から2023年まで6年連続で「特A」評価を獲得しています。
にこまるは、柔らかめの食感で強い粘りが特徴。ゆめぴりかやミルキークイーンなどの品種が好きな方におすすめです。
2.つや姫
つや姫も、高温耐性のある品種として有名です。
高温環境で育てたコシヒカリとつや姫の食味を比較した試験では、つや姫のほうが食味が安定して優れており、食感も良かったという結果が出ています(*3)。
つや姫はうま味や甘味が強く、どんなおかずにも合います。食感も比較的しっかりしており、表面がべちゃっとせず、適度な粒感があります。つや姫も複数の産地がありますが、おすすめは山形県産です。
3.彩のきずな
彩のきずなは、埼玉県で生まれた品種です。埼玉県では、2010年の記録的な猛暑によりお米の品質低下が起こり、経済的に大打撃を受けました。二度と同じことが起こらないよう、県をあげて高温に強いお米の品種を開発することに。
こうして誕生した彩のきずなは、2020年から4年連続で食味ランキングの「特A」評価を獲得しています。
彩のきずなは甘味やうま味が強すぎず、爽やかな味わいが特徴。それこそ、暑い夏にぴったりの味わいですね。お米は大粒ですが、柔らかめの食感です。
4.恋の予感
恋の予感は、広島県で誕生した品種です。高温耐性が高く、猛暑でも品質を保ちやすいため、急増する需要に合わせて生産が拡大されている品種です。
広島県産の恋の予感は、2021年から3年連続で食味ランキングの「特A」評価を得ています。
恋の予感は、あっさりした味わいと、もちもちの食感が特徴。やや大粒で、しっかりした食感があります。冷めてももちもち食感はそのままなので、お弁当やおにぎりにもおすすめの品種。
5.みずかがみ
みずかがみは、温暖化に対応する品種として滋賀県で開発されました。
猛暑でも品質が影響されにくく、食味ランキングでも「特A」評価を5回獲得しています。また、みずかがみは環境保護にも十分配慮して栽培されており、農薬や化学肥料の使用量などに基準が設けられています。
みずかがみは、ほどよい粘りと甘味があり、食感は少し硬めです。琵琶湖に反射する光のように、炊き上がりのお米は白くつややか。あっさりした味わいのお米が好きな方におすすめの品種です。
いつものお米を美味しく食べるには?
猛暑の影響で食味の落ちたお米を美味しく食べる対処法も紹介します。
いつもと同じように炊飯しているのにベチャベチャになる、柔らかすぎて美味しくないと感じる場合は、以下の対処法を試してみてください。
・水分量を少なめにする
・早炊きモードにする
・氷を入れる
高温の影響を受けたお米は、水分を素早く吸収して、炊き上がりが早まり、ベタついた食感になることが多いです(*1)。それを防ぐためには、水分量を少なくしたり、炊飯時間を短縮したりするのがおすすめ。
また、水分を減らして氷を入れると、お米の炊き上がりを遅くする効果が期待できます。
反対に、ご飯のパサつきが気になる場合は、水分量を増やすか、浸水時間を長めにして対処しましょう。圧力鍋を使って炊飯するのもおすすめです。
北海道産のお米を選ぶのもおすすめ
冷涼な気候の北海道では猛暑の影響を受けにくく、お米の品質も保たれやすくなります。北海道には人気の品種が多くあるので、猛暑の年は北海道産のお米を選ぶのもおすすめです。
1.ゆめぴりか
ゆめぴりかは、もちもちした柔らかい食感が楽しめることで人気の品種。しっかりした甘味と、濃厚なうま味が感じられます。
冷めても硬くなりにくく、お弁当やおにぎりにしても美味しく食べられます。
2.ななつぼし
ななつぼしは、ゆめぴりかより若干あっさりした味わいの品種です。粘りもゆめぴりかほど強くはなく、どんなおかずにもよく合います。
食味ランキングでは14年連続で「特A」評価を獲得している実力派。北海道では最もよく食べられている品種で、近年では道外での人気も高まっています。
3.きらら397
粘りが少なく、硬めの食感のお米が好きな方には、きらら397がおすすめ。さっぱりした味わいと、しっかりした粒感が楽しめます。べちゃっとしにくいので、炒飯やピラフなどにも合う品種です。
暑さに負けないお米を選ぼう
お米は猛暑の影響を受け、品質が落ちてしまうことがあります。しかし、近年では高温に強い品種も多く開発されており、猛暑の年でも美味しいお米が食べられるようになりました。
いつものお米も、水分量や炊き方を工夫すると美味しく食べられるので、今回紹介した方法を試してみてくださいね。
Written by Yukari
異常気象からお米の品質を守る取り組みは、早い段階から進められていました。国や自治体をあげての対策や、農家さんたちの努力、そして何より稲のもつ生命力に感謝したいですね。
参考文献
*1 農林水産省「水稲の高温障害粒発生要因(玄米品質低下)と軽減対策」
*2 森田敏「水稲高温登熟障害の生理生態学的解析」
*3 浅野目 謙之 et.al 「水稲新品種「つや姫」の食味特性評価」
*みんなの農業広場「高温障害に強い稲の栽培法」
*石郷岡康史 「農業における気候変動影響と適応策」