ゆで卵を作ったときに、黄身の周りが黒や緑に変色してしまうことがありますよね。この現象は、なぜ起こるのでしょうか。今回は、ゆで卵の変色の原因や黒くならない方法について紹介します。
※この記事で紹介する内容は、卵が腐敗していないことが前提です。
ゆで卵が黒くなるのは成分同士の化学反応!

タンパク質の豊富な卵には、さまざまな種類のアミノ酸が含まれています。アミノ酸の中には、分子内に硫黄を含むものがあり、含硫アミノ酸と呼ばれています。(システインやメチオニンなど)
この含硫アミノ酸が加熱によって分解されて硫黄が遊離すると、硫化水素を生成します。そして、その硫化水素が卵黄に含まれる鉄と結合すると黒い硫化鉄になります。
これこそが、変色の原因。
ゆで卵の黒い部分の正体は硫化鉄だったのです。

硫化鉄は黒色をしていますが、卵黄の色と混ざって緑色に見えることもあります。
ちなみに、硫化鉄は食べても問題はありません。ゆで卵が変色すると不安になると思いますが、もともと卵の中に存在していた成分の結合が変化しただけなので、安心して食べて下さいね。
*豆知識メモ
箱根の名物・黒たまごは、温泉で茹でることで温泉に含まれる鉄が卵殻につき、それが硫化水素と反応することで殻が黒くなります。
ゆで卵が黒くならない方法

ゆで卵の変色の原因が「硫化鉄の生成」であることが分かりましたが、この化学反応が起こりやすい条件があります。
・ゆで時間が長い
・卵が古い
この条件に当てはまると、硫化鉄が生成されやすく、ゆで卵が変色してしまいます。つまり、変色を防ぐには反対のことをすればOKです!では、ひとつずつ見ていきましょう。
1.ゆで時間は10分程度に

卵に含まれる含硫アミノ酸は、加熱時間が長いほど分解されやすく、硫化水素を発生しやすくなります。おでんや鍋に入れる卵は長時間煮込むため、黒ずんでいることが多いですよね。
15分以上ゆでると変色しやすいので、加熱時間は10~12分以内にするのがおすすめです。
2.ゆで上がったら氷水で冷やす

鍋から取り出した卵はすぐに氷水で冷やすのもポイントです。
ゆで卵を氷水に入れると卵の温度が急速に下がり、内部の圧力が下がります。すると、卵白の中にできた硫化水素が殻の方へ向かっていきます。
その結果、硫化水素が黄身の鉄と接触せず結合もしないため、変色を防ぐことができるのです。
3.新鮮な卵を使う

卵は、保存期間が長くなるにつれて卵白のpHが上昇していきます。産みたての新鮮な卵の卵白のpHは7.6程度ですが、保存しているあいだにpH9以上に上がります。これは、時間とともに卵白中の二酸化炭素が卵殻の気孔から外へ逃げていくため。
そして、卵のpHが高いほど硫化水素が発生しやすい状態になります。ゆで卵をきれいな色に仕上げたいときは、新鮮な卵を使うのもポイントです。
ちなみに、卵が古くなると卵白の粘度が落ちて、黄身を中心に保つ力も弱まります。新鮮な卵を使うことで、黄身が中央にくるきれいなゆで卵に仕上がりますよ。
ゆで卵の変色は防げる!

ゆで卵が黒や緑色になるのは、卵に含まれる成分同士の反応なので、変色しても問題なく食べることができます。しかし、ちょっとしたコツできれいな色に仕上げることもできるので、ゆで卵を作る際に活用してみて下さいね。
参考文献
・大越ひろ, 品川弘子, 飯田文子編著『新 健康と調理のサイエンス』, 学文社, 2020
・菅原龍幸監修『新版 食品学Ⅱ』, 建白社, 2018
\卵焼きの実験も行っています/