鉄は貧血予防に効果的な栄養素ですが、摂りすぎにも注意が必要です。しかし、鉄はどれくらい摂ったら過剰摂取になるのでしょうか。この記事では、鉄の1日の適切な摂取量や上限量、摂りすぎたときに起こる症状について紹介します。
鉄の1日の摂取量は?
鉄の1日の摂取量の目安は、年齢や性別によって異なります。下の表で、年齢・性別に応じた鉄の摂取推奨量をチェックしてみてくださいね。
男性 | 女性 (月経なし) | 女性 (月経あり) | |
1~2歳 | 4.5mg | 4.5mg | ー |
3~7歳 | 5.5mg | 5.5mg | ー |
8~9歳 | 7.0mg | 7.5mg | ー |
10~11歳 | 8.5mg | 8.5mg | 12.0mg |
12~14歳 | 10.0mg | 8.5mg | 12.0mg |
15~17歳 | 10.0mg | 7.0mg | 10.5mg |
18~49歳 | 7.5mg | 6.5mg | 10.5mg |
50~64歳 | 7.5mg | 6.5mg | 11.0mg |
65~74歳 | 7.5mg | 6.0mg | ー |
75歳以上 | 7.0mg | 6.0mg | ー |
同じ年齢の女性でも、月経があるかないかで鉄の必要量は変わります。特に成長期は、体の成長に合わせて血液量も増えるため、鉄の需要量は増加します。
妊娠・授乳中も鉄欠乏性貧血が起こりやすいため、以下の量をプラスして摂取しましょう。
妊娠初期:+2.5mg
妊娠中期・後期:+9.5mg
授乳中:+2.5mg
鉄の過剰摂取はどれくらい?
鉄は、摂りすぎると過剰症が起こることから耐容上限量が設定されています。
耐容上限量とは、「健康障害をもたらすリスクがないとされる習慣的な摂取量」のことです。つまり、耐容上限量を超えて過剰に鉄を摂取すると、健康障害が起こる可能性があります。
あくまでも「習慣的な摂取量」なので、1日の摂取量が耐容上限量を超えたからといって、すぐに健康障害が起こるわけではありません。しかし、なるべく過剰摂取は避けましょう。
鉄の耐容上限量は、下の表を参考にしてくださいね。
男性 | 女性 | |
1~2歳 | 25mg | 20mg |
3~5歳 | 25mg | 25mg |
6~7歳 | 30mg | 30mg |
8~11歳 | 35mg | 35mg |
12~14歳 | 40mg | 40mg |
15歳以上 | 50mg | 40mg |
摂りすぎるとどうなる?鉄の過剰症
鉄を摂りすぎると、以下のような症状が起こる可能性があります。
・下痢
・胃痛
・便秘
・ヘモクロマトーシス
鉄を過剰摂取すると、下痢・胃痛などの胃腸症状や、便秘が起こりやすくなります。
また、鉄の過剰症として知られているのが「ヘモクロマトーシス」です。ヘモクロマトーシスは、体内に貯蔵された鉄が異常に増加し、臓器に鉄が沈着して、その臓器に障害をもたらす病気です。
主に、肝臓、皮膚、心臓、精巣、甲状腺などに鉄が沈着し、肝硬変、皮膚色素沈着、心不全、性腺機能低下、内分泌機能低下などを引き起こします。
ヘモクロマトーシスは発症までに時間がかかるため、40歳以降で症状が現れる場合がほとんどです。症状がなくても、水面下で臓器に鉄が沈着している可能性はあります。
月経のたびに鉄が排出される女性に比べて、男性のほうがヘモクロマトーシスの発症率が高いのも特徴です。
通常の食生活を送っていればヘモクロマトーシスの心配はありませんが、サプリでは大量の鉄を簡単に摂取できてしまいます。鉄分サプリを過剰に摂取するのは避けましょう。
また、乳児や幼児が鉄分サプリなどを誤飲すると、吐き気や下痢、白血球の増加、昏睡などの症状が起こり、対処が遅れると致命的となることもあります(*2)。治療用の鉄剤、鉄分サプリの保存場所には十分な注意が必要です。
鉄を過剰に摂取する「バンツー族」に起きた症状
南アフリカのバンツー族は、日常的に大量の鉄を摂取しています。それは、鉄の容器を使って作ったビールを常用しているため。バンツー族の男性は、ビールから1日あたり50~100mgの鉄を摂っているそうです。また、バンツー族は調理にも鉄鍋を使用するため食事にも多くの鉄が含まれます。このように鉄を過剰摂取した結果、肝臓に鉄が沈着する「バンツー鉄沈着症」が発症しました。
鉄は適切な量を摂取することが大切
鉄は赤血球の構成成分であり、体に必要不可欠な栄養素です。月経のある女性は特に鉄欠乏性貧血を起こしやすいため、鉄を積極的に摂取する必要があります。
通常の食生活を送っていれば鉄の過剰症の心配はほとんどありませんが、鉄分サプリなどでは過剰摂取してしまう可能性があります。1日にどれくらいの鉄が必要なのかを把握し、摂りすぎを避けてくださいね。
参考文献
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
*2 食品安全委員会「鉄」