カルシウムを豊富に含むことで知られる牛乳ですが、ほかにはどのような特徴や効果があるのでしょうか。今回は、牛乳を飲むことで得られるメリットを紹介します。牛乳中の機能性成分や、飲み過ぎた場合のデメリットも併せて紹介するので参考にして下さいね。
牛乳は栄養素密度が高い食品!

栄養素密度とは、ひとつの食品100kcalに含まれる栄養素の量です。一般的な食品に比べて、牛乳は栄養素密度の高い食品に分類されています。
特に、カルシウムやビタミンB群が多く含まれるのが牛乳の特徴です。牛乳コップ1杯(200mL)で、飽和脂肪酸、カルシウム、リン、ビタミンB2、B12、パントテン酸は、1日に必要な量の20%以上が摂取できます。
タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 | カルシウム | ビタミンB2 | ビタミンB12 | パントテン酸 | |
牛乳 | 5.4 g | 6.2 g | 7.9 g | 180.3 mg | 0.25 mg | 0.5 mg | 1.8 mg |
食パン | 3.6 g | 1.7 g | 18.7 g | 8.9 mg | 0.02 mg | – | 0.2 mg |
ウインナー | 3.6 g | 9.6 g | 1.0 g | 1.9 mg | 0.04 mg | 0.2 mg | 0.2 mg |
豆乳 | 8.1 g | 4.6 g | 7.0 g | 34.1 mg | 0.05 mg | 0.0 mg | 0.6 mg |
牛肉 | 4.3 g | 9.7 g | 0.06 g | 1.2 mg | 0.04 mg | 0.4 mg | 0.1 mg |
牛乳を飲むとどんなメリット・効果がある?
さまざまな栄養素が含まれる牛乳ですが、どのような効果が期待できるのでしょうか。牛乳を飲むことで得られるメリットを紹介します。
1.カルシウムの吸収率が高い

牛乳はカルシウムが豊富に含まれる上に、他の食品に比べて吸収率が高いことも特徴です。牛乳のタンパク質が体内で消化・分解されると、カゼインホスホペプチドという部分消化物ができます。この成分がカルシウムの不溶化を防ぎ、腸管からの吸収率を高めてくれます。
こちらの表は、食品のカルシウム吸収率を比較したものです。
牛乳 | 小魚 | 野菜 |
40% | 33% | 19% |
カルシウムは小魚や野菜にも多く含まれますが、これらの食品に比べて牛乳のカルシウム吸収率が高いことが分かりますね。
2.鉄の吸収率を高める

前述のカゼインホスホペプチドは、カルシウムだけでなく鉄の吸収もサポートしてくれます。
牛乳そのものには鉄はほとんど含まれていませんが、鉄を多く含む食品を一緒に摂ることで、効率よく体内へ取り込むことができます。
鉄は赤身の肉や卵、貝類、小松菜やほうれん草などに多く含まれるので、これらの食品と牛乳をあわせて食べるのがおすすめです。牛乳をベースにあさりやほうれん菜を入れて、クラムチャウダーやグラタンにすると美味しく食べられますよ。
3.栄養素の代謝をサポートする

牛乳に多く含まれるビタミンB群は、糖質・脂質・タンパク質などの栄養素の代謝に欠かせない成分です。これらのビタミンが不足すると、栄養素の代謝が滞り、疲労や貧血、皮膚炎などをはじめとする不調が起こります。
口内炎や肌荒れが起こりやすい方は、ビタミンB2やB6などが不足しがちなサインなので、牛乳を食生活に取り入れてみると良いですよ。
牛乳は料理に使うメリットも

牛乳には、調理面でのメリットもあります。魚やレバーなどを牛乳に浸けると生臭さがやわらぎ、料理を美味しく仕上げてくれます。
また、シチューやホワイトソースを白く、まろやかな風味に仕上げるのも牛乳の性質によります。ビスケットやスポンジケーキに焼き色や香りを付与する役割もありますよ。
牛乳の摂取目安量と飲み過ぎによるデメリット

牛乳を飲み過ぎると、飽和脂肪酸の過剰摂取やカロリーオーバーにつながります。また、日本人は乳糖の分解能が弱い方が多いので下痢や腹痛を起こす場合もあります。
牛乳の1日あたりの摂取目安量は200mLです。ヨーグルトやチーズなど、ほかの乳製品を食べる場合は、牛乳の量を少し減らして調節して下さい。
ただし、少し飲み過ぎたくらいで健康にデメリットがあるわけではないので安心して下さいね。
トクホの成分にも認可!牛乳に含まれる機能性成分

牛乳中の成分は、特定保健用食品(トクホ)として効果が認められているものがあります。ここでは、それらの成分をご紹介します。
※特定保健用食品では、牛乳中の成分を抽出、濃縮・加工を行い効果を高めています。そのため、特定保健用食品と牛乳では成分の含有量や効果に差があることをご了承ください。
1.ミネラルの吸収を助ける「カゼインホスホペプチド」
カゼインホスホペプチドは、牛乳中のタンパク質が体内で消化・分解される過程で生成されます。腸管でのカルシウムや鉄の吸収を促す作用があり、「ミネラルの吸収を助ける」成分として特定保健用食品に認可されています。
カルシウムは、pHの高い小腸下部ではリン酸と結合して不溶化が起こり、吸収率が悪くなります。カゼインホスホペプチドには、リン酸化されたセリン(アミノ酸)が集中的に存在する部分があり、マイナスに帯電したリン酸基と、プラスに帯電したカルシウムがゆるく結合します。このようにカゼインホスホペプチドがカルシウムと結合することで、腸管内の他のリン酸との結合を防ぎ、カルシウムの不溶化を抑えます。
2.骨密度を高める「MBP」
MBPは、雪印メグミルクが牛乳中から発見した成分です。骨からのカルシウム流出を防ぐとともに、骨にカルシウムを沈着させることで、骨密度を高める効果があります。
特に、女性は閉経後のエストロゲン減少によって骨密度が急激に下がりやすいので、MBPの入った食品を取り入れると骨粗鬆症の予防に役立ちます。
骨が新しく形成される際は、まず破骨細胞が骨を壊し、壊した部分を骨芽細胞が埋めます。この2つの細胞の働きはどちらも必要なものですが、破骨細胞の働きが骨芽細胞を上回ると骨がスカスカになってしまいます。MBPには、破骨細胞の働きを抑制し、骨芽細胞の増殖を促す効果があります。
3.高めの血圧に「ACE阻害ペプチド」
牛乳中のタンパク質を分解することで、さまざまなACE阻害ペプチドが得られます。ACE阻害ペプチドには血圧を降下させる作用があり、高血圧や動脈硬化の予防に効果的です。
ACE(アンジオテンシン変換酵素)とは、体内でアンジオテンシンⅡという物質を作る際に必要な酵素です。アンジオテンシンⅡには血圧を上昇させる作用や、血圧降下作用のある物質を分解する作用があります。ACE阻害ペプチドは、これらのACEの作用を阻害することで、血圧を下げてくれます。
牛乳中のACE阻害ペプチドにはIPP、VPP、FFVAPFPEVFGKなどがあり、いずれも特定保健用食品として認められています。ちなみに、IPPやVPPなどはアミノ酸の配列を示しています。
IPP=イソロイシン・プロリン・プロリン
VPP=バリン・プロリン・プロリン
牛乳にはさまざまなメリットがある!

今回は、牛乳の栄養素や効果などを紹介させていただきました。牛乳は栄養価が高く、適量の摂取により各種のメリットが得られます。また、料理を美味しく仕上げるためにも役立つので、牛乳を上手に食生活へ取り入れてみて下さいね。
Writer Profile
yukari
食生活アドバイザー。牛乳はそのまま飲むより、料理に使ったりカフェラテにしたりすることが多いです。子供の頃から牛乳をよく飲んでいたからか、女性ですが170cmまで身長がのびました(笑)。